Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 05 16
……同時刻。
いちど、上空から戦場全体を俯瞰することにしたホットショットは、
急降下を決断して光の残像を纏い、無数の艦橋の間をくねりながら旋回する。
そのたび、光速のビームを矢継ぎ早に放ち、発射されるミサイルも、北の方から迫るミサイルも、すべて空中で的確に撃ち抜いて粉砕していく。
するとその瞬間――空間を欺いていたシャカゾンビ機の光学迷彩が、彼女の目の前でいきなり弾けた。
急なターンとともに機体が進路を変え、かの機体はホットショットめがけて扁平なノーズコーンを傲然と突きつける。
同時に、水面に差す陽光のような線状の光――ベクトル・マグネターの放射が空を奔り、
その光に絡め取られたミサイル群の軌道が、次々と不規則にねじ曲げられていった。
だが、本来はロイ・キーン並みの闘争心を秘めているホットショットである。普段使いの人格としての――冷静で皮肉屋な自分、それを極限まで抑えた今、彼女の目に恐れの色は微塵もなかった。
むしろ、もっとも原始的な自分の"かたち"――パーソナルカラーと能力と、応援するフットボールのクラブ、その色合いと、まったく同じクオリアを持つ本来の自分をさらけ出した彼女の口元には、まるで焼けつく鉄のごとく獰猛な笑みが浮かんでいた。
「……ガキの使いだと思ってんのかぁ!?ビームもシールドも、そっちの手品は全部見切ってんだぞ!」
そう不良の因縁めいた叫びをぶつけるや否や、
――キィイイイイイン!
ロイ・キーンがアルフ・インゲ・ハーランド(アーリング・ハーランドの父)を引退に追い込んだ、あの伝説的なタックルを彷彿とさせる勢いで、頭からミサイルの群れへ猪突猛進に飛び込んでいった。
予測不能な軌道で迫る弾頭の合間を、それ以上に予測不可能なマニューバで絡み合うようにすり抜け、
最小限の迎撃でひとつずつ撃ち落としていく。
ドォン!
ドォン!
ドォン!
爆炎と閃光が間断なく背後に咲き乱れる中、ホットショットは一瞬たりとも止まらず、ついには敵航空機の目前にまで肉薄する。
……それはまさに緩急の極み!超音速の突進から一転して、まるで妖精のような優雅さで敵の眼前を挑発的にひるがえった炎の少女が、両の手足を指先までおもいきり広げる。
「……悪いな、R-3000指定の映像だっ!2500歳以下の若造は目つぶし確定ッッッ!!!!」
即座に、その全身が極限まで輝きを放ち、特大のフラッシュがコクピットのシャカゾンビへと叩きつけられた――。
……エネルギーシールドは、けして万能の防護壁ではない。
そこには、高強度のエネルギー――レーザーや衝撃波――には抵抗するが、閾値以下の低エネルギーは透過させるという厳然たる設計が存在する。
なぜかといえば、もしすべてのエネルギーを無差別に遮断すれば、光もまたエネルギーである以上、コクピットは外部の視界を失い、さらに装甲に張り巡らされたシールドは、空気分子との接触だけで急速に消耗してしまうからだ。
この選択的な防護は、戦闘における実用性を確保するための必然的な妥協にほかならなかった。
そこへいくと、ホットショットが発したものは閾値を下回るエネルギーの放散、ようは、ただの「明るすぎる光」にすぎなかった。
それゆえエネルギーシールドの検閲を易々とすり抜け、コックピットを情緒もなく直撃したのである。
熱のない超新星爆発が、群青の空をはるか遠くまで染め上げていき、
無数の艦影や海面の波頭という、灰色に沈んでいた戦場のすべてを銀白色にあばき出す。
「……ぐわあああああ!」
意識の輪郭さえ吹き飛ばされそうなそのまばゆさに、シャカゾンビは反射的に手を顔に当てて身をよじった。




