Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 05 15
複雑にのたうつ配線と計器が壁面を埋め尽くす薄暗い通路を、スヌープキャットは重心を低く保ったまま先行した。
彼女は行く手を阻む鉄製の手すりを、体操の選手もかくやという軽やかな跳躍で飛び越えると、着地の勢いを殺さぬまま滑り込み、次の隔壁へと取り付いた。
小さなガラス枠ののぞき窓から向こうの様子を鋭く凝視し、
「さな、隔壁の向こうにまだいるみたいだよ!」
と、追いついた相方へ向けて短く、しかし緊張感の走る声をかけた。
対するミーティスは
「……うぅん!」
と、覇気のない、それでいて義務感だけはたっぷりと詰め込んだ返事を漏らす。
覚悟を決め、シュッ!と指先を弾き、1枚の札を鋭い風切り音と共にダーツのような軌道で放たせた。
呪符は一直線に飛び、着弾の刹那、
――ドゴォォン!!
分厚い鉄の扉が、内側からの圧力に耐えかねたように激しく爆ぜ、真っ赤に焼けた大きな穴を中央に穿った。
その開口部から、待機していた数100枚の札が、獲物を見つけた魚の如くびらびらとうごめきながら、
室内の暗がりへと一斉になだれ込んでいく。
「うっ!」
「なんだ、今の音……」
「何かが飛んでるぞ!見えるか!?」
「――たすけ、っ……!」
という、戸惑いと絶望が入り混じった叫びが、数発の空しい銃声と共に断続的に漏れ聞こえてくる。
だが、それもほんのひとときの出来事。やがて一帯を支配したのは、
先ほどまでと同様、誰1人として例外なく床に崩れ落ちていく、寂然たる制圧の光景だった。
2人は通路に横たわる「動かなくなった人々」に、申し訳なさそうに無言の謝罪を済ませる。
スヌープキャットが壁面の表示板を手早く確認し、
「制御室、こっち!」
と、大きな声で進路を指し示した。
「……さっさといっちゃお!」
この気まずい空気が漂う空間に長居しかねた2人は、グレーチングを激しく踏み鳴らし、再び脱兎のごとき勢いで駆け出した。
やがて辿り着いたのは、艦の最深部に位置する心臓部、すなわち制御室である。
同様の手順で打ち破られた扉の隙間から、ミーティスが最後の呪符群を慈悲もなく注ぎ込む。
室内から物音が消え、装置の駆動音だけが虚しく響くのを確かめると、2人はゆっくりと中へ足を踏み入れた。
床に横たわる司令官たちの姿を痛ましげに見下ろし、ミーティスは自身のコスチュームの裾を所在なさげににいじる。
「全員、無力化完了……」
と、しぶしぶ、それでいて確実に任務の達成を報告するのだった。




