Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 05 10
「そういえばお前、着衣泳の授業サボってたよな?」
濡れたイムノを吊り下げたまま高度を上げ、艦隊の方角へ向けて飛行するホットショットが、からかうように軽やかな声をかける。
「泳ぎは苦手なの!……ボートを拾うから、適当な船まで運んで!」
「兵器があの飛行機から出てるのは見たな?アイツ、ここで戦う気らしいぞ?」
「うん、それはおおむね私の読み通り。アシュリーの追跡を嫌がって、ここで決着をつけるつもりだって――そこまではわかってた」
「ヒューッ!カッコイー!」
失態を晒した直後であるにもかかわらず、得意げに戦況を分析するイムノを、ホットショットは冗談めかして持ち上げる。その明るい笑い声が、燃えさかる戦場の海域に一瞬だけ平和な光を投げかけた。
*
姉妹とのドッキング飛行で戦場の中枢に突入したホットショットは、
「……あそこにして!」
「いいぞ!」
標的となる艦をひとつ見定め、火花と爆煙の渦巻く甲板めがけて大きく放物線を描いて降下していく。
甲板の上では、爆発の余波で鉄板がたわみ、黒煙が渦巻いていた。
その間にも背景では、艦砲の咆哮とミサイルの発射が絶え間なく繰り返され、至る所で爆発が巻き起こる。黒煙は途切れることなく空へ立ちのぼり、甲板も海面も、濁流と閃光に塗りつぶされている。
「……よし、では存分に社会奉仕に励んでくれたまえ!」
イムノは、ホットショットの昇り調子な飛行から、なかば放り出されるように勢いよく甲板へと着地する。数10mの距離があった長い滞空ののち、地面を転がりながらも動きを止めることなく、
身を翻して素早く立ち上がった。
その刹那、耳をつんざく轟音がした。
視界の先では、黒光りするドローン・パンジャンドラムが狂ったように甲板を暴れ回り、
鋼鉄の車輪が火花を撒き散らしながら、逃げ遅れた兵士たちのもとへ不規則な軌跡で迫っていたのである。
「どいて――!」
イムノは、身をひねっての飛び込みのまま、ガンブレードを高く振り上げ、
甲板まで断つ勢いでそれを一気に浴びせかける。
サンッ!
銀の剣光がドローンを両断し、その切断面を潜り抜けてイムノが鮮やかに着地を決める。
直後、断面からは複雑に組み込まれた内部の回路が一瞬のきらめきを放ち、分断された本体は甲板を何度も跳ねながら転がり、やがて壁際で、煙を吐き上げながら完全に動きを止めた。
「早く!ここから離れて!」
学生服の剣士の叫びに、はっとした兵士たちは次々と船内へ駆け戻る。
彼女はみじかく息を整え、あたりを見回した。
……カメラが低空を這うように滑走し、 軍艦1隻の船首から船尾まで――つまり、爆炎と黒煙に包まれた甲板から艦橋、さらに船体の端までをひと続きに映し出していく。
やがて画面は一転し、船内の暗い格納庫へと切り替わる。
開きかけた扉の隙間からさしこむ外光――その中で、イムノが手際よくボートのラッチを外し、次の瞬間、白い閃光のように軍艦の船尾からその姿を滑らせた。
我々の視点はそのまま、エンジンボートを駆るイムノに織り重なり、波間を跳ねる艇と共に、新たな戦場の只中へと飛び出していく。




