issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 04 19
「よぉし、よぉし。心配ないぞ。わしがおるからの。大丈夫じゃ……大丈夫じゃからの……」
はちるは泣いていた。声を上げず、肩だけが痙攣していた。尊の腕の中で、15歳の体が震えている。
それでも両腕だけは、「何か」を乗せた形のまま、動かせずにいた。
尊はそれを、泣いている赤ん坊をあやしているつもりだった。
腕に抱えたものが自分の肩まで届く大きさであることにも、
頬に触れる毛並みが赤子の産毛ではないことにも、何の疑問も抱いていなかった。
おせちは、動けなかった。
忘れられることには、覚悟ができていたはずだった。「誰じゃ」と問われること。
「知らん」と拒絶されること。母から、赤の他人として道を尋ねられた、あの朝。
その段階の絶望なら、1度くぐっている。
しかし、これは忘却ではなかった。
尊は覚えていた。4人の赤ん坊を拾い上げたあの日のことを。初めて指に触れ、初めて名を呼び、
この子らはわしの家族じゃと宣言した――3000年の孤独がようやく溶けた、たった1度のあの日を。
4つの重さも、4つの体温も、小指を握り返してきた力の強さも。鮮明に。一点の曇りもなく。
ただそれが15年前の記憶だという、その一点だけが焼け落ちていた。
今がいつなのか。ここがどこなのか。目の前に立つ4人が、
あの夜の赤ん坊たちの成長した姿であること。その接続だけが灰になり――しかも時折、
思い出したように、不完全な形でつながる。




