issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 04 11
「ってことは、力は使ってないんだな?」
アシュリーが眉をひそめる。
「徒歩……それか公共交通機関?」
さなが、ふと思いついたように小首を傾げて言った。
その一言で、パズルのピースが嵌る。4人は顔を見合わせ、そして同時にひとつの推論に到達する。
能力を使わず、人目を避けて移動した。となれば、目的地は限られる。彼女にとっての原点。
心が傷ついた時、本能的に帰巣しようとする場所。
「島根だ……」
はちるが呟く。
「……吉濱神社!」
おせちが断定した。 かつて彼女が祀られ、人と共に暮らした場所。神としての記憶が最も深く刻まれた地。今の尊が向かうとすれば、そこしかない。確信めいた予感が、4人の背中を強く押した。
*
4人はいそぎ駐車場へと駆け込み、そこにある黄色い巨体――ロング・カウンターへと滑り込んだ。
ドライバーシートに飛び乗ったはちるが、荒々しくイグニッションを叩く。
腹に響く駆動音と共に、タイヤ代わりの多層リングが同調して折りたたまれ、機体はふわりと宙に浮き上がる。 住宅地の上空を飛ぶそばから、空間そのものがねじれ、瞬く間に異次元の回廊へと突入した。
物理的な距離など意味をなさない。ほんの数呼吸の後、景色は松江市の上空へと切り替わっていた。
吉濱神社。そこは人跡が絶え、ひっそりと静まり返った場所だ。2年に1回、4人にとっては、
里帰りと称して掃除と手入れに訪れるだけの土地。そして今、そこに響くのは風が木々を揺らす音だけだ。拝殿、本殿、裏の林。4人は手分けして境内を走り回る。
「……お母さん!」
「いないの!?」
返事はない。配の残滓はおろか、草履の足跡ひとつ見当たらない。
4人は境内の真ん中でかち合い、立ちつくした。アテが外れたのか。
それとも、さらに別の場所へ移動したのか。 冷たい焦燥感が、心臓を鷲掴みにする。
その時、はちるのポケットでスマートフォンが震えた。自宅の固定電話への着信を転送する設定にしていた端末だ。画面には見知らぬ固定電話の番号。市外局番は、ここからそう遠くない地域の警察署を示している。はちるは震える指で通話ボタンをスライドさせた。




