issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 04 10
「どうする? 警察に届けるか?」
アシュリーが焦燥に駆られて声を荒げる。だが、おせちは首を横に振った。
「無駄だよ。もし母さんが能力を使って移動していたら、警察犬やドローンで見つかる範囲にはもういない。下手をすれば成層圏か、マリアナ海溝の底だよ」
その通りだった。もし尊が衝動的に全力を解放して移動していた場合、
常識的な捜索範囲など意味をなさない。4人は冷や汗を流しながら、
それぞれのスマートフォンを取り出し、画面が割れんばかりの勢いで指を走らせた。
検索ワードは『爆発音』『未確認飛行物体』『衝撃波』『ソニックブーム』。 SNSのトレンドとリアルタイム検索を駆使し、世界のどこかで「超高速の移動」と解釈できる超常現象が発生していないかを、血眼になって探る。
「北米で竜巻発生……これは違う、自然現象だ!」
アシュリーが画面を睨みつけながら悪態をつく。
「インド洋で謎の発光現象……いや、これはデブリか衛星の落下だね。ママじゃない」
はちるが冷静に、しかし早口で情報を切り捨てる。
「近所のコンビニで喧嘩……関係ないね」
さなもまた、必死にローカルニュースを洗っていた。
数10分のリサーチの結果。
世界は不気味なほど平和そのものだった。彼女が縮地を使って大陸を横断した痕跡もなければ、
モーゼのごとく海を割って進んだ形跡もない。地表に起こった、衝撃波による被害報告も皆無だ。
「ない。何も起きてない」
おせちがスマホをテーブルに置いた。




