issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 04 07
3対1。いや、アシュリーの啖呵に胸の内で拍手を送っている者を数えれば、
4対0だ。この場の感情は、綺麗にひとつへ揃っている。
それを見届けてから、おせちは静かに口を開いた。
「そうだよね。……アシュリーの気持ちは、もっともだと思う。幸い、私たちには人一倍の体力がある。
不眠不休で看病を続けたって倒れない、頑丈すぎる体……それもこれも、全部、母さんがくれたものだから」
噛み含めるような、ゆっくりとした肯定だった。恩返しという言葉の重みを、1文字ずつ確かめるような。
――だが。
その先に、残酷な「しかし」が続くことを、この場の全員が予感していた。まとめ役の彼女が、
感情に同意するためだけに口を開くはずがないのだ。
おせちは一度言葉を切り、姉妹の目を順に見た。そして静かに、
けれど抜き身の刃物を畳の真ん中へ置くように、問いかけた。
「でも……みんな、冷静に想像してみてほしいんだ。今のこの生活は、たまたま世の中が平和だから、
かろうじて回ってるだけだとしたら?もし明日、シャカゾンビみたいな怪物がまた現れたら?
……そのサイレンが鳴った時、私たちは母さんの世話をしながら、同時に、世界も守れるのかな」
鉛のように重く、暗い沈黙が落ちた。
誰の脳裏にも、同じ光景が浮かんでいたはずだ。緊急出動を告げる通信。燃える街。
そして、その裏で誰にも見守られず、鍵の開いた玄関からふらりと夜へ出ていく、
小さな着物の背中――。




