issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 04 04
重苦しい悲嘆が、部屋の酸素を薄くしていく。
そのただ中で、尊だけが――どこまでも穏やかな、聖母のような微笑みを浮かべていた。
「泣くな、バカ娘ども。神でさえ、勤めを果たせば死は免れぬ。……いや、むしろ喜ぶべきことじゃ。
お前たちが立派に育ったからこそ、わしは安心して消えることができるんじゃからな」
尊は手を伸ばし、泣きじゃくるさなの頬を拭い、それから、堪える4人の頭を、
順に、慈しむように撫でていった。
おせち。アシュリー。さな。はちる。
――その順番は、遠い遠いあの夜、組み上げたばかりのベビーベッドの柵越しに、眠る4つの頬をつついていった順と、寸分違わず同じだった。憶えていてそうしたのか。それとも掌が勝手に憶えていたのか。それは、彼女にしかわからない。
ただ、その掌の温もりだけは、あの夜と、そしてこれまでのどの日とも変わらず温かく――これから消えゆく者のものとは到底思えぬほど、皮肉なくらいに、力強かった。
「今日は天気が良い。……学校から戻ってきたら、久しぶりに、皆で茶でも飲むか」
その日は、嘘のように穏やかな時間が流れた。
陽の傾いた縁側に、5人と1体ぶんの湯呑みが並ぶ。押し入れの奥から引っ張り出されたアルバムが開かれ、母と背丈の変わらぬ4人の「7歳児」が写った、あの七五三の1枚に、涙の乾ききらぬ笑い声が上がる。昔話は尽きることなく次の昔話を呼び、茶のお代わりは何巡もした。
まるで、あの騒がしくも幸福だった日々が、そっくりそのまま帰ってきたかのような――奇跡の、いちにちだった。




