issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 04 03
朝の光が、白い衣を透かして淡く発光させている。それがいっそう不吉だった。
「座れ。……大事な話がある」
4人は息を呑み、導かれるまま、母を取り囲むように正座した。誰も口を開かない。
開けない。部屋の空気は冷たく張り詰め、時計の秒針の音だけが、コチ、コチ、と――何かへ向かう不吉なカウントダウンのように、鼓膜を叩き続けている。
尊は慌てなかった。おせちの顔を見た。アシュリーの顔を見た。さなの顔を、はちるの顔を見た。
1人1人を、その目に灼きつけるようにゆっくりと、愛おしげに見渡してから――事務報告でもするような、淡々とした調子で、己の導き出した結論を口にした。
「単刀直入に言う。……わしの寿命は、ここまでのようじゃ」
「……え?」
アシュリーの声が裏返った。
「ボケたのではない。壊れたのでもない。ただ、『終わる』んじゃよ」
尊は自分の掌を見つめたまま、平然と語り続ける。
「神というものはな、本来、『役割』としてこの物質界に存在する。
わしは幾星霜もの長きにわたり、この星の守護者の端くれとして、
そして未熟な人類を導く教導者として機能し続けてきた」
そこで彼女は顔を上げ、開け放たれた窓の向こう――朝の光に呑まれた空へと、目を細めた。
「だが、現状を見よ。どうじゃ?お前たちは立派に育ち、長年の確執があったテラリアとも和解し、
それどころか宇宙からの脅威まで退けてみせた。人類は地球という揺り籠から卒業し、これからは自らの足で宇宙へと向かう……」
語り口に、湿り気はない。まるで長い勤めを終えた官吏が、最後の引き継ぎ書を読み上げるような、
静かで折り目正しい声だった。
「もはや、この星にわしという『介入者』の出番はないんじゃよ。役割を全うしたシステムは、遣わされてきた世界へと戻る。……それが、この宇宙の動かせぬ摂理じゃ」
彼女の語る言葉は、残酷なほどに論理的だった。
認知症に見えたあの症状は、病ではなかった。魂の本質が地上用の殻から少しずつ乖離し、
「吉濱尊」という存在の定義そのものがほどけ始めたことによる――昇天の、過程。
つまり母は、壊れていたのではない。ずっと、帰り支度をしていたのだ。




