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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#06 I I I Little Talks

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issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 04 02

(……ああ)

と尊は悟った。これは、回復ではない。


嵐が上陸する直前の、あの不気味な凪。あるいは、燃え尽きる寸前の蝋燭が、

最後にひときわ高く掲げる炎。去りゆく者に、身辺を整理するだけの猶予を与える――死神の慈悲、

とでも呼ぶべき明晰さだった。


「……?」

そこで、ふと気が付いたこと。傍らで、何かが寝息を立てている。


視線を落とせば、布団のすぐ脇に丸まった猫――ではない。よくよく見ればそれは、重力にすっかり敗北し、スライムのように全形を崩した、ゲル状のピンク色の物体だった。4本の触手のうち前側を器用に折りたたんで枕とし、すうすうと規則正しい寝息を立てている。マクロブランクだ。


畳の上には、飲みかけの吸い飲みと、絞って干からびた手ぬぐいが置かれている。

彼は夜通し、こうして枕元に付き添ってくれていたのだ。


尊は皺ひとつない小さな手を伸ばし、剥き出しの大脳皮質を、起こさぬよう、そっと撫でた。


「かたじけないのう、マクロ……。そうじゃ、お前ももう、今では立派な家族じゃな……」

家族。その言葉を口にした途端、なすべきことが、朝の光と同じ明るさで見えた。



『……皆、ここへ来てくれ』

その声は、念話となって、朝のはちるの部屋を静かに駆け抜けた。


「――」

味噌汁の椀が、宙で止まる。箸が止まる。4人は互いの顔を見合わせた。今の声には、ここ数週間の幼児退行じみた甘えも、老いによるかすれも、ひとかけらも含まれていなかったからだ。むしろ、

往時よりもなお張りのある、凜と澄み渡った響き。それはまぎれもなく、

彼女たちが物心つく前から聞き続けてきた「母の声」だった。


だからこそ――嫌な予感がした。4人は申し合わせもなく席を立ち、何かに弾かれたように、

母の寝室へと急いだ。


「母さん……?調子、いいの?」

おせちが、おそるおそる襖を引く。


そこには、布団の上に正座し、背筋を1本の芯のようにピンと伸ばした尊が、鎮座していた。

身に纏うのは、就寝用の白無垢の長襦袢、ただ1枚。その白1色の1枚が、今日の彼女たちの瞳には、

単なる寝間着ではなく、「死に装束」そのものとして映り込んだ。


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