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issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 04 01
CHAPTER 4
目覚めの瞬間。
尊は気づいた。この数週間、自身の脳裏にベットリと張り付いて剥がれなかった、
あの分厚い泥が――何の奇跡か、綺麗さっぱりと洗い流されていることに。
「――」
窓から射し込む朝の光が、網膜へ鮮烈な白を焼き付ける。眩しい。
眩しい、と感じたそのことすら、輪郭のはっきりした思考として、恐ろしいほど明瞭に像を結ぶ。
試すように、彼女は記憶の棚へ順に手を伸ばしていった。昨夜の夕飯の献立。
――出てくる。
愛する娘たちの名前。
――おせち、アシュリー、さな、はちる。
ひとつも間違えず、出てくる。自分が何者で、どこから来て、何を為してきたか。
――痛いほど、鮮明に。
それどころか。
できることなら永遠に忘れていたかった記憶までもが、氷のような冷徹さで蘇っていた。
壁に叩きつけたヨーグルトの器。「誰じゃ」と問うた時の、娘たちの凍った顔。
はちるを「ポチ」と呼んだこと。マクロを胸の中で潰しかけたこと。
病に蝕まれた自分が、この数週間、愛する者たちにどれほど酷い仕打ちを重ねてきたか――その勘定書きの1行1行が、逃げ場なく、克明に読めてしまう。




