issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 03 19
日記
シノの見た目を今更挿絵で追加したってワケ
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記憶の川が緩やかに流れ、夢の景色は別の場面へと移ろう。
季節は巡り、ハイハイを卒業した幼子たちが、頼りない足取りで大地を踏みしめ、
「ママ」「おかあしゃん」という、母親にとってはこれまでの苦労が報われる魔法の言葉を、
ぼちぼち覚え始めた頃のことだ。その日は本来、我が子の成長に目尻を下げる、
感動的な1幕となるはずだった。だが、尊の目に映ったのは、心温まる家族の記録などではない。
それは、取り扱い次第で人類への災厄にもならおう規格外の力の萌芽たちだった。
その日の午後、境内で遊ぶ4人の姿を、尊は縁側から茶を啜りつつ眺めていた。
事の起こりは、アシュリーの癇癪だった。よちよち歩きの最中、
足元のささいな小石につまずいて転んだ彼女は、
悔しさと痛みで顔を真っ赤にして泣き出したのだ。
「うえぇぇぇん!!」
通常、赤子の泣き声と共にほとばしるのは涙と鼻水である。
だが、生まれついての炎の申し子である彼女の場合は、出力されるものが違った。
絶叫と共に、彼女の口腔から紅蓮の火炎が放射されたのだ。
ボォォォォッ!!
「なっ!?」
尊が湯呑を取り落として腰を浮かす、その目の前で、吐き出された熱波は前方の植え込みを瞬時に炭化させ、庭石をドロリと赤熱させた。泣けば泣くほど火力が増す。それは人間の感情表現の域を完全に逸脱した、霊的な核融合の暴走だった。
「まずい、水を……!」
尊はあわただしく指を奔らせ、印を結ぶ。 延焼を防ぐべく水遁の術を練り上げ、前傾姿勢になり、
突き立てた片手の指を口元へ。大きく息を吸い込んだまさにその瞬間、頭上を、何かがふわりと、
風船のような浮遊感で横切った。
「とりしゃん、まってー」
見上げれば、さなだ。 彼女は空を行く鳥を追いかけ、重力を完全に無視して、
本堂の大屋根と同じ高さまで舞い上がっていた。背中に翼があるわけではない。
ただ純粋に「飛びたい」と願っただけで、物理法則の方が彼女にへりくだり、
その身を空へと持ち上げたのだ。
無垢な笑顔で空を泳ぐその姿は、天使というよりは、未確認飛行物体そのものだった。
(シノのイラストを今更作ったのでいまさらここに挿入しておく)




