issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 03 15
「あー、うー……。うー……」
はちるの喉から、唸り声とも子守唄ともつかぬ、低い低い声が漏れ始める。
遠雷のような、あるいは大きな獣の寝息のような、腹の底へ直接響く振動。
――するとどうだろう。
あれほど狂ったように泣き叫んでいた3人が、まるで魔法にかけられたかのように、
次々と鎮まっていくではないか。アシュリーの絶叫が途切れ、
火の粉が消える。さなの明滅が、穏やかな寝息の律動に溶ける。おせちの涙が、乾いていく。
やがて――壁に穴の空いた部屋を満たすのは、4つの安らかな寝息だけになった。
瓦礫と土埃にまみれた惨状のただ中で、互いに身を寄せ合って眠る4人の赤子たち。
その陣の中心にはちるがいる。姉妹たちを覆う盾のように四肢を張り、
外へ――壁の大穴の向こうの、未知なる世界のすべてへ向かって、堂々たる寝顔をさらしていた。
「なんと……」
ぺたん、と。神は、その場にへたり込んだ。
頬を熱いものが伝っていく。慌てて目尻をぬぐうが、後から後からあふれ出るそれは、
いっこうに止まる気配がない。ほんの数分前まで、魔獣に対するような怯えを向けていた相手である。
その同じ相手に、今は涙腺の堤防を丸ごと明け渡していた。
「なんという……なんという、強く、優しい子じゃ……」
力が強いだけの子ではなかった。壁を砕いたあの膂力は、姉妹たちを守る円陣の芯として在るとき、
まるで別の意味を帯びる。群れを率い、弱き者を背に庇う――王者の器。
それが、あの小さな毛玉には、生まれながらに備わっているのだ。
障子ごと突き破られてボロボロになった小袖も、背中の激痛も、壁の大穴から吹き込む夜風も、
もはやどうでもよかった。尊はただ、瓦礫の中に咲いたその神々しいまでの姉妹愛に、
いつまでも心を打たれ続けていた。




