issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 03 14
ばっ!
白い毛玉が、弾丸のごとく垂直に打ち上がる。頂点、交差、一瞬。
宙を舞う布の端を、その強靭な顎が「はっし」と正確に咥え込んでいた。
トタン、と羽のような着地音。驚くべきことに、咥えられた側の"獲物"への衝撃は、皆無だった。
はちるはそのまま自らの体重を錨とし、パニックで明滅を続けるさなを、
ゆっくり、ゆっくりと地上へ引きずり戻した。凧を取り込むような、辛抱強い手繰り寄せだった。
そして、着陸した姉妹の、小刻みに震える頭へ――分厚い肉球のついた前足が、そっと乗せられる。
ポン、ポン、ポン。
さきほど神を石灯籠まで撃ち出したものと同じ腕とは、到底信じがたい。拍子はどこまでも不器用で、
しかしそこには、「ここにいるぞ」と伝える確かな意志があった。明滅の間隔が、少しずつ、
少しずつ開いていく。
さなの光が凪いだのを見届けるや、はちるは次の現場へ、4つ足で這い進む。
向かった先は、声も上げぬまま涙の滝を流し続ける、おせちの元だ。
はちるは無言で顔を寄せると、その濡れた頬へ、自らのフカフカの頭を押し付けた。
ぐりぐり、と乱暴に、しかし丁寧に、毛皮のタオルが涙を拭い取っていく。おせちの瞳が、
ふしぎそうに瞬いた。滝の水量が、目に見えて細っていく。
最後は、最大の難所である。この世の終わりを全身で告知し続ける、アシュリーだ。
はちるは、手足をばたつかせて暴れるその小さな体へ、滑り込むように身を寄せた。そして、
じたばたと抵抗する姉妹を、構わず自らの懐の奥深くへと引き込み――逃がさぬ、と言わんばかりに、
力強く抱きすくめた。乱暴なようでいて、燃える髪の1本も苦にしない。
それは、最強の捕食者だけが持ち得る、家族を外敵から隔離するための絶対的な抱擁だった。




