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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#06 I I I Little Talks

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issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 03 09

「ふ、ぁ――……」

赤子が、欠伸をした。


「――ッッ!?」

尊は、のけぞった。

無防備に開かれた小さな口腔。その内側にずらりと覗いたのは、乳歯というにはあまりに冒涜的な、

鋭利な獣の歯列だった。山形にギザギザと連なる白い切っ先が、夕日を受けて、ぬらりと光る。噛み千切る側の骨格である。狩る側の口である。


「み」の音が、喉の奥で砕けた。

――歯が、散る。あるいは、歯で、散らすか。

その物騒きわまる視覚情報が、半ば決まりかけていた穏やかな音を、頭の中で強引に上書きしていく。


「……は、ちる。……『はちる』じゃ」

欠伸ひとつで名前を書き換えさせた赤子は、当人だけ何も知らぬまま、ぷすうと再び寝息を立てた。

かくして4人目には、この世のどの姓名判断の書にも載らぬ、特異な名が定着することとなったのである。



夕日が、部屋の隅々までを金色に染め上げていた。畳の目も、長持の古い木肌も、

ただよう埃の1粒1粒までもが、光を含んで黄金の粒子と化している。


その温かな空気の中、尊は並んで眠る4つのあどけない顔を見下ろし、頬を緩ませていた。

拾って、運んで、買い出して、調合して、飲ませて、名付けた。

怒涛の1日であったが――どうやら報われたらしい。あとはこのまま、静かな夜が来るのを待つだけ。


……と、思っていた。


だが。ミルクを最後の1滴まで飲み干したというあの事実は、安息の訪れを告げる鐘の音などではなかった。あれは狼煙だ。空腹という生命維持上の最大危機を脱した赤子たちの小さな体に、

いま急速にエネルギーが充填されつつあることを告げる――開戦の狼煙だったのである。


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