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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire

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Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 04 31

「――追うぞ、お前たち」


おせちは、まるで石の布団に包まれていたかのような瓦礫の山から、ゆっくりと上体を起こした。

すると、肩や背中から細かな粒が音を立てて落ちていく。


立ち上がりながら、身に降りかかった無数の石片を、丁寧に手で払い落とし、

さらに頬に付いた黒い煤、制服の襟に残った灰、髪の毛に絡んだ細かな破片を、ひとつひとつ念入りに取り除きつつ、


「……そうだね」

きっぱりと返事をした。


その背景で、他の者も各自の思いを胸に、立ち上がろうとしたその時、

「すまぬ、少しだけ――」

尊は唐突に、懐から旧式の受信機を取り出して耳にあてた。

しかし今は、その何気ない動きにさえ負った傷の感覚が漏れなくにじんでいる。


「なんだよそれ?スマホ持ってないだろ?」

アシュリーは、肩で息をする時の声を出しながら、そう訝しんだ。


「無線じゃ。……おお、これは……。いや、こっちはちょうど奴と1戦交えたところでな。――はぁ……なるほど。うむ……それで、すぐにか?わかった、なんとか急いで向かおう。かたじけないの。オーバー」

息を切らしながらも、短くやりとりを済ませた尊が顔を上げると、

「どうしたの?」

とさなが静かに尋ねた。


「いやの。簡単に言うと、頼んでおいた“裏の筋”にたった今動きがあったのよ。奴らの関与を証明する決定的な新たな証拠がたった今手に入ったんじゃ。


じつは、わしは今日ご公儀の方まで直談判に行っとっての。そこでは結局、証拠がなければ何もできぬと言われて門前払いされてしまったんじゃ。


そういうワケで弱り果てておった時にこの一報よ、これでようやく、お国の方もわしの真剣に話を聞いてくれるようになるわ」


「証拠って、どんなの?」

さなが身を乗り出す。


「詳しい話は今はできぬ。というより、先方のたっての願いで、わしが現地に行くまではすべての事はシークレットなのじゃと。


つまり、現物はわしがみずからの手で受け取りに行かねばならん。悪いが、シャカゾンビの追撃はお前たち4人に任せたい。きっと日本海の方角よ。お前たちだけで先行してくれ」


「本気ぃ?」

はちるが疑わしげに尋ねる。


「本気じゃ。たとえ証拠を手に入れたとしても、あやつの目論見が現実になってしまえば、もう取り返しがつかん。今日の日本軍の演習は、北の主張する領海のギリギリの場所で行われることになっておる。


しかも実弾を実戦さながらに使う。

もしもその場所で、やつが北のミサイルを捻じ曲げた例の手品を使えば、両国は強制的に開戦することになるじゃろう。


それだけはどうしても止めねばならん。

……お前たちにもこれを渡しておく。暗号通信のできる無線機じゃ」


述べつつ尊は、無骨な機械をはちるに手渡した。


「でも乗り物がさぁ……」

すると、はちるが心配そうに声を落とす。


「ああ、そうじゃのう……。わしの方はどうにかなるが、お前たちの方の足もないことにはな。……いや、

むしろ今はそちらを優先せねばならんか」

という母の言葉を皮切りにして、全員が悩み出すと、


折よく背後から、1人の男の声がする。

「――いいよ。近場までなら送ってやる。今から適当に理由つけてヘリを出すから、さっさと乗れ」

誰そ彼かと思って全員がその方を向くと、


「……マツバラさん!」

まず、さながぱっと顔を上げて、おせちも驚きの声を発した。


おせちとアシュリーは、この年齢不相応のストリートファッションに身を包んだままの男の顔を、この時初めて、本当の意味ではっきりと認識した。


これまでは、一時的な利害を共にする人間として、その顔は記憶の片隅に留められているだけだった。だが今、昼の光の中に立つ男の表情には、たしかな人間味が宿っていた。


「……だよな!自分の娘くらいの年のやつが粋がってるのを見て、まともなおっさんの心が動かされないってことはないよな」

そしてアシュリーは腕を組み、ふてぶてしさにあふれたウィンクを男の方へ滑らせた。


……廃墟と化した街の向こうから響くヘリコプターのローター音が、次第に圧を増してくる。

「チッ、でもお前ら、思ってたよりよっぽどタフじゃねえか。超人同士が本気で殴り合ってるのを見たなんて、去年のワンリパブリックとDJケミカルのヤツ以来だぜ」


「それは……わかんないけど」

とおせちが曖昧に返し、


「でも、まずは1度家に戻って補給したいです。私の弾も、さなの札も、もうあまり残ってないし」

そして、こう続けた。


「そのくらいまとめて面倒見てやるさ。急ぐんだろ?」

「あっはい、お世話になります!」

おせちは、これまで彼に抱いていた軽蔑心や疑念とは正反対の、素直な感謝の気持ちだけを込めて、16歳の年相応な笑顔で明るく礼を述べた。


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