Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 04 30
「――ッッ!!」
1戦を終えたばかりの者たちにとって、シャカゾンビが巻き起こす嵐のような大魔術はあまりに重く、圧倒的すぎた。
あれほどの雄姿をみせた4人の娘たちも、まず自分が車さえ浮かす魔風に吹き飛ばされることがないよう、必死になるしかなかった。
イムノは近くの岩盤にしがみつき、ミーティスは鉄骨に身を寄せ、ほかの2人は両手で顔を覆って嵐の通り過ぎるのを待った。
雷光の直撃が大地を打ち据え、長さ数10cmのコンクリート片が空中で踊り狂う。その破片の雨の中で、
「!!」
決闘の場から弾き飛ばされたオールラウンダーは抗う間もなく、どこかの壁に背中からめり込んでしまう。
……こんな嵐の中で、ことのほか玲瓏に響く金属音があった。はじめの一瞬は甲高く、次いでは、音源のたわみを徐々に反映し始めたその響きは、
七支刀が、遠くの地面に深々と突き刺さった音だった。
「フハハハハ――愚か者どもよ、吾輩にとって戦いの決着など、いまこの場でつける値打ちもないもの!貴様らは指をくわえて、これから吾輩が何を為すか、心して見届けるがよいわ!」
シャカゾンビは制圧した戦場を睥睨し、広範囲に及ぶ魔力で空気そのものをねじ伏せていく。大気が波打ち、光が屈折し、現実がゆらめく。
すると、その手に引きずられていくのは――意識を失ったままのプロディジー。彼の身体が宙に浮き、抵抗する力もないまま、ゆっくりと宙を滑っていく。
まもなく巨大な航空機からが青い光の柱が垂れ下がって、シャカゾンビとプロディジーの身体を、
そのトラクタービームが無造作に吊り上げる。2人の影が立ち姿のまま地面から離れ、空へと昇っていくのだ。
直後――この2500歳のマッドサイエンティストが自ら設計した超技術の航空機は、重力の束縛を振り払うように、静止状態から一気に垂直加速し、雲の切れ間へと消えていった。
……青い推進光の残像だけを残して。
*
――同じ頃、市ヶ谷の上空。
テラースクワッドの黒いガンシップのコクピット内では、カラスがくちばしで数々の計器をつつきながら、どこかやるせなさの混じった声をこぼしている。そう、つまりは彼が、このいかつい航空機の操縦を
くちばし1本で完璧に切り盛りしているのである。
「……ったく、ま~た後始末かよ!ボスの作戦ってセメセメだから失敗した時いつもこうなるんだよな、
それで泥かぶるのは結局こっちの羽毛なんだから……」
「……ま、命令は命令!しっかりやらないと後で何言われるかわかったもんじゃない……っと」
ぼやきながらも、彼は事前の指示通り、眼下を進む護送車とその護衛車の列に向けて1発のヘルファイアミサイルを投下した。
弾頭が煙を引いて飛んでいけば、轟音と爆炎が、あまりにも簡単に車列の半ばに巻き起こる。
大きく吹き飛んだ先導車は車線を逸れて横転し、それとおなじく地面を転げ、滑った真ん中の車体からは、ハヴォックの、拘束衣に封ぜられる焦げた体が投げ出された。
その直後、SVTOLの挙動で地上に舞い降りたガンシップから部下のロボットたちが手際よく降り立って、彼の巨体が回収されていく。
「はいはい、お仕事完了と……。でもこれ手当てでんのかなぁ?ムリだろなぁ……世知辛い世の中だよ、なんでカラスに生まれてまでこんな思いしなきゃならないんだ。人間だけでいいじゃねぇか、おい」
カラスは独りごちるが、飛行機の高度を微妙に調整しつつ、任務だけは最後まできっちり果たしてみせる。
…………………………。
終わってみればシャカゾンビの攻勢とは、たしかな惨況をこの地に刻んでいったことを除くなら、まるでうたかたの夢のようなものだった。
地上に残されたのは瓦礫の海原と、彼の魔術に吹き飛ばされて倒れ伏した4人の娘たちと、片方の剣を杖代わりにして、膝をついたオールラウンダーの小さな影だけだった。
「行ってしもうた……。奴の尻尾をつかみ損ねたのは口惜しいが、いまは気を落とす暇もない――」
尊の視線が、シャカゾンビが消えていった雲の切れ間を追う。
「――あやつは必ず、今日の軍の演習の場で新たな企みを仕掛けてくるじゃろう。ゆえに、嘆いておる時間はない――」
尊がよろよろと立ち上がれば、七支刀の刀身が地面に擦れて金属の音を立てる。
その言葉には静かな決意と、時間に追われる薄い焦燥が宿っていた。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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