issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 03 01
CHAPTER 3
娘たちの手によって、尊の体は自室の敷布団の上へと横たえられる。
はちるの腕は、壊れ物の骨董か、信管の剥き出しになった爆弾でも扱うような慎重さで、
衣擦れの音ひとつ立てさせなかった。抵抗はない。暴れ疲れたのか、その小さな体はもう、
濡れた和紙のように頼りなく撓むだけだった。
窓越しの西日が、畳の目をひとつずつ数えるように、ゆっくりと部屋を横切っていく。
さっきまでの喧騒が嘘のように、空気は凪いでいた。背中を包み込む綿の感触だけが、
内からの脅威に追い立てられ、どこにも逃げ場のない彼女を、ただ黙って受け止めている。
「……」
まどろみの中で頼りなく揺らめいていた意識の灯火が、フツリ、と音もなく掻き消えた。
芯の燃え尽きた蝋燭のように。彼女の精神は、思考も時間も届かない深い闇の底へと、
ただ重力に従って沈んでいく。
落ちて、落ちて――その暗い水底で、彼女は懐かしい光と再会を果たした。
それはあまりに騒々しく、胸が軋むほどに愛おしい、「あの日」の夢だった。
*
「……オギャアアアアッ!!」
「フギャアッ!フギャアアアッ!!」
吉濱家の空き部屋は、今この瞬間、阿鼻叫喚のるつぼと化していた。
4つの喉が競い合うように張り上げる絶叫は、互いに干渉し、増幅し合い、
高い天井にわんわんと反響して、もはやひとつの巨大な音響兵器と化している。
閉め切った障子が音圧にビリビリとわななき、鴨居からは埃がはらはらと舞い落ちた。
境内の木々で羽を休めていたカラスの群れが、たまらず一斉に飛び立っていく。
「ええい、静まれ!静まらんか!わしは神じゃぞ、本来は祈られる側なんじゃぞ!?」
若き日の尊が、振り乱した髪を直す余裕もなく叫ぶ。あまたの魔を調伏してきた神威の一喝も、
生まれたての生存本能が全開で吹き鳴らす警報の前には、そよ風ほどの効き目もなかった。
泣き声は止むどころか、挑発と受け取ったかのごとく、さらにボルテージを上げていく。
……ベビーベッド代わりに蔵から引きずり出した古い長持の上には、拾ってきたばかりの4つの命が、
ずらりと並べて転がされていた。
――そう。「拾ってきたばかり」。すべて今日、たった1日のうちに起こった出来事である。
尊は泣きわめく4つの顔を順繰りに見下ろしながら、我が身に降りかかった本日の荒唐無稽を、
軽いめまいと共に反芻した。




