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issue#06 I I I Little Talks CHAPTER 02 28
次の騒ぎは、なんの前触れもない穏やかな昼下がりにやってきた。
尊は1人、家の門を抜け出すと、あてどもなく近所を歩き回りはじめた。
行き先を決めているのは頭ではなく足だ。塀に沿って曲がり、電柱の影をまたぎ、
知っているようで知らない路地を、ふわふわとした足取りで進んでいく。
その足が、ふと、1軒の古びた住宅の前で止まった。
「――」
庭が荒れている。長らく人の手が入った気配はなく、
雑草は膝の高さを越すまで伸び放題。彼女はその光景を、まだ夢の続きに立っているような、
輪郭の溶けた目でしばらく眺めていた。
――荒れた庭。庭といえば、わが家。ならば、これはわが家の庭。
脳内で、たった3つの飛び石だけを渡って、思考は対岸へ着地してしまった。
その間に流れているはずの広くて深い川へは、一瞥もくれないままに。
「……おお、おお、なんということじゃ!わが家の庭が、これほどまでに荒れ果てておったとは。
……子らが帰るまでに、綺麗にしておいてやらねばな」
そこが自宅とはまるで別の場所だという事実を、彼女は疑うことすらしない。
よその敷地の境界線を、自宅の玄関をまたぐのと寸分違わぬ気安さで、ひょいと踏み越えた。




