Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 04 27
「よし、じゃあすぐ『ドン!』だよ!さな!」
「うん!」
ふたりの会話を聞き終えるや、スヌープキャットは反射的に大きくその場から飛び跳ねた。
瞬間――
都市の地下に潜んでいた札群が、刹那の間を置かず一斉に閃光を放った。
ズババババンッ!!!
数10から100の規模で手始めに起こった爆裂が、まるで地中から巨大な獣が暴れ出したかのような衝撃となって地上を揺るがせる。
下水道の天井が断続的に爆砕され、轟音とともに地面が激しく波打つ。アスファルトの表層が次々と沈み込み、道の真上に展開していた敵ロボット部隊は逃げ場なく、陥没した穴へと次々と呑まれて消えていった。
そのさなか、現場の通りに突入しようとしていた車両は、異様な揺れと轟音によって一様にパニックを起こし、タイヤを軋ませてバックで退避する。車体を左右に振りながら、必死に元の道を引き返していく。
都市の通りの地下全域で起きた、2000枚の呪符による壮絶な連鎖爆破――その余波は地表を何度も跳ね上げ、遥か遠くまでの震動となって伝わる。
わずか10数秒で、かつてない地盤沈下とともに敵勢力は跡形もなく呑み込まれ、街の一画には巨大な沈降地が新たに刻まれていた。
*
……報道ヘリが高空を旋回し、静けさを取り戻した都市の通りを俯瞰する。
まるで新たに生まれた温泉地のように、広範囲にわたって白い煙が立ち上り、
アスファルトの大地や崩れ落ちた建物の隙間には、熱を帯びた瓦礫の山が奇妙な静寂と余韻を漂わせていた。
沈降地の一角、瓦礫の崖錐に立てかけられたアスファルトの平たい岩盤――かすかに白線の痕跡が残る――その下に何枚かの札をそっと差し入れ、岩盤ごと持ち上げた瞬間、ミーティスが思わず声をあげる。
「……あっ、いた!」
その場所で、気を失ったままのプロディジーが発見されたのだった。
「すぐ引っぱたいて起こして話を聞かなきゃ」
「あっ、だったらウチはアシュリーの方、手伝ってくるよ!」
おせちとはちるが、それぞれの場所で即座に反応する。休む間もなく、3人は次の行動を思案し始めていた。
「お~い!」
ちょうどその時、遠くの空からアシュリーが一直線にこの通りへと飛来する。
彼女の両手は、この場にいるはずのない人物――吉濱尊の姿をしっかりと掴んでいた。
「母さん!?」
と、おせちが驚き混じりに声を出し、
「無事か?」
尊の一言とともに、2人は滑らかな着地を決めた。
「どうしてここに!」
おせちがあわてて尋ね返す。
「母は母の働きをしておったのじゃ!あの日あの時あの場所で、己の口で言うた通りにな!
逆にお前たちこそなんじゃ。わしの親心を無下にして、こんなことまでしおって」
一家の母は、煤の滲んだ着物姿でいきなり居丈高な態度を見せ、おせちの顔を睨み上げた。
「でもさ……!」
おせちは不満そうに言いかけてから、少しだけ唇をかむ。
「なあ、正直に聞かせてくれんか。どうして来てしまったのじゃ……」
続く尊のその声音には、我が子の重大な決断を前にした親の、抗いがたい脆弱さが宿っていた。
それは、どこの馬の骨とも知れぬ相手と急に結婚すると言い出した娘や、険しい前途となることは確実な、アスリートの道を志す息子――そうした未来を選ぶ子を前にして、
本心では思いとどまらせたいと願いながらも、繰り返し問いかけることでしかその想いを伝える術を持たない親の、哀切極まりない響きだった。
見る者の心をも揺さぶらずにはおかない、痛ましいまでの表情で、尊は娘たちに問いかけたのだった。




