issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 68
北米大陸、かつてフューチャー・ラボと謳われた最果ての地。いまやその地平は、
見渡す限りの緑苔に侵食され、数1000年もの時を早送りしたかのような古代遺跡へ姿を変えていた。
その中心において、往還の負荷で駆動系をついに焼き切らせ、緑青色の死骸と化したレッキンクルー・ブルースが膝をついている。その肩の上で、マミーDは最後の葉巻へ火を灯した。
「……へッ。完敗だ」
紫煙を深く吸い込み、肺腑から吐き出す。眼下に広がるのは、うねり狂う緑色の海だ。彼が築き上げた銀色の帝国は、組織から放逐したはずの男が仕込んだたった1種のウイルスによって、
その彩度ごと根こそぎ奪われた。動く影はない。彼自身の足元でさえ、這い上がってきた粘着質の蔦が軍靴を締め上げ、次第に自由を奪っていく。
「いい現場だったぜ。……だが、工期終了だ」
マミーDは、悪あがきひとつせず両手を空へ掲げた。その仕草は、熟練の職人が1日の労働を終え、腰の道具ベルトを解く際の潔さに重なる。
呼応するように、大地を覆っていた緑のナノマシンが一斉に鎌首をもたげた。
地殻がきしむごとき重低音が響き、無数の蔦が編み込まれ、空を閉ざすほどのドームが形成されていく。
直径100m。半透明のエメラルドグリーンに輝くその「植物の檻」は、マミーDを含むWCWCの幹部たち、そして彼らが誇った重機群を、優しく、けれど絶対的な拘束力で飲み込んでいく。
内部は、外気とは完全に隔絶された特異点、バイオ・チャンバーである。
「あばよ、地球の跳ねっ返りども。次に会う時は……もっとマシな図面を持ってきてやるよ」
緑の曲面に空が閉ざされる寸前、マミーDはニヤリと唇を吊り上げ、ゴーグルの奥でウインクしてみせる。悪党の矜持を貼り付けたその不敵な笑みは、瞬時に固形化した緑色の琥珀の中へ、永遠の標本として封じ込められた。




