issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 67
深海の闇に包まれた潜水艇。その狭い艦内は、
モニターからあふれ出す蛍光グリーンの光で満たされていた。
マクロブランクの視線の先で、世界地図が塗り替わる。銀色の支配領域が、
毒々しい緑の粘菌に冒されたかのように食い荒らされ、その版図を塗り潰していく様を、
彼はまたとない甘美な映像として網膜に焼き付けていた。
脳裏の奥底から、苦い泥の味がせり上がってくる。かつてニュー・ジャマメの祝勝会で、
シャカゾンビという怪物を前に、冷や汗を流しながら弁明した己の姿だ。
『た、たしかに……奴らの技術は、この宇宙の法則における限界点に肉薄しつつあるレベルでちゅ――』
『――認めまちゅよ。今のこの、肉体を持たぬ不完全なわちきでは、奴らの域に並ぶのに多少の学習を要する分野もあることは……。しかし! 万全の状態であれば――』
モニターの照り返しを受けたその口元が、ふいに、三日月形に裂けた。それは真の天才だけが浮かべることを許された、傲岸不遜な愉悦の歪み。
「そういえば、あの時アイツらは聞いていたんでちゅかね?その域に達するのに『多少の学習を要する分野もある』と言ったことを――」
回想を断ち切るように、マクロブランクは独りごちる。
ぬらりと持ち上げた触手が、コンソールの上で止まる。 狙うは1点。
「――その『多少の学習』が、これにて終わったのでちゅ」
触手が振り下ろされ、エンターキーが小気味よい音を立てて底を打つ。
それは勝利の宣言であり、旧時代の終わりを告げる断頭台の音でもあった。
世界が、緑1色に染まりきる。 宇宙1の技術屋を自負していたWCWCが、
真に宇宙1の頭脳を持つ天才によって、その技術基盤ごと完全敗北した瞬間だった。




