issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 60
その着弾を見届けるよりも早く、イムノの身体は隣のビルの壁面へと飛び移っていた。
靴底でコンクリートを削りながら着地の勢いを殺し、膝を深く曲げてから再び対角線上の壁へと跳躍する。
空中で身体を反転させながら、別の方角へ向けてさらに引き金を引いた。
熱を帯びた空薬莢が吐き出されて宙を舞い、2発目の青い閃光が新たなルートを切り裂いていく。
壁を蹴り、空中で撃ち、別の壁へ着地してはまた蹴る。シリンダー内の弾が完全に尽きるまで、
彼女はその一連の動作を淀みなく繰り返した。
通常であれば、放たれた電撃は対象を貫いて消散するはずのものだ。
だが、イムノが計算し尽くした射角は、浮遊するビルの壁面を大きな反射板として巧みに利用していた。
1発目の雷弾がコンクリートの表面を浅く抉りながら跳弾し、鋭角に軌道を変えて次の壁へ向かう。
そこからさらに跳ね返り、3つ目の壁面へと連鎖していく。
単なる直線だった光の軌跡が空中で複雑な折れ線へと変わり、それが交差して網の目となり、
やがては対象を閉じ込める立体的な檻へと変貌を遂げていく。
――ギャギャギャギャギャァウンッッ!!!!
無数の青白い光の線が、乱立するビルの合間を高速で跳ね回り続ける。それらは互いに絡み合い、
レッキン・クルー・ブルースの周囲を逃げ場なく包囲する高圧電流の立体格子を編み上げていった。
そして、その雷光の残滓を埋め尽くすように、今度は紫色の吹雪が空を覆い尽くした。
ミーティスが両の掌を左右に大きく開くと、ゆったりとした袖口から万単位の呪符が一斉に噴き出した。蝶の羽ほどの薄さしかない紙片の群れが、帯電してバチバチと鳴る大気に吸い寄せられ、
イムノが張り巡らせた稲妻の骨格へ次々と張り付いていく。電撃が走る格子の隙間を、紫色の呪符が鱗のように覆い隠した。
雷の骨組みの上へ、呪術の皮膚がびっしりと張られていく。科学の産物である電子の網と、
神秘の産物である紙の壁が完璧に噛み合った。レッキン・クルー・ブルースを外界の空間から完全に隔絶する、難攻不落の高出力結界が空中に完成したのだ。




