issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 58
「監督、一丁借りますぜ!」
チコ・カリートが叫び、両腕を頭上へ突き上げた。赤い肌の指先が何かを掴む仕草をする。
何もない空中を、握る。
頭上を旋回するコンクリートの魚群――落下しきれずに軌道上で渋滞を起こしていた摩天楼の群れから、
ひときわ背の高い1棟が、不自然に軌道を逸らした。見えざるフックに引っ掛けられたかのように、
他の落下物の流れを横切り、チコ・カリートの真上へと引き寄せられていく。
ハイファナも同じく4本の腕で空を握り、チコの干渉と呼吸を合わせていた。
2人の意志が同時にビルへ食い込んだ瞬間、構造物が見えざる引力に引っこ抜かれるように急激に降下する。
そのそばから、ビルの形が変わり始めていた。
コンクリートの外壁が、粘土を捏ねるように波打つ。内部の鉄骨がミシミシと音を立てて折れ曲がり、
別の配列へと組み変わっていく。何1000枚もの窓ガラスがスライドして重なり合い、
レンズ状の集光板を形成した。1本の建造物が、上から下へ向けて順番に、別のものへと書き換えられていく。屋上のアンテナが砲身の先端に。エレベーターシャフトがエネルギー伝導管に。
ロビーの吹き抜けが弾薬庫に。
完成した時、それはもうビルではなかった。天を突く長大な砲身を持つレーザーキャノンが、
空中に屹立している。深奥部でエネルギーが臨界に達し、砲口の1点に向けて破壊の光が収束していく。充填が進むにつれ、砲身の周囲の大気が熱に耐えきれずに揺らぎ始めた。
陽炎が、ビルの輪郭をぐにゃぐにゃに歪ませている。
「まずいぞ、次、あのビームが来たらこらえきれねぇ!」
ハヴォックの悲鳴が、砲口の向く先――味方の戦域に響き渡った。




