issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 50
「……受け取りご苦労!」
「宛先不明で返送しまーす!」
陥没した穴の底――その縁から、菱形の破片が舞い散る一瞬、スヌープキャットは鋭い視線で頭上の敵を見据える。彼女は腕の中の相棒を――お姫様抱っこの体勢から、受け止めた勢いを殺さずに上乗せし、全力で放り投げた。 投げ出されたホットショットは即座に炎を噴き上げ、赤い機体へ向けて再突入する。
マミーDの意識が前方へ固定される。その一瞬の隙を突き、
死角となる頭上後方からイムノが刃を振り下ろす。
「もらった!」
だが、左腕のナセルがマミーDの意思を追い越して自律稼働する。
多重関節が不気味な駆動音を立てて逆方向へ回転し、背後へ迫る刃の軌道上へ割り込んだ。
肘のシリンダーを強制的に固定し、行き場を失った運動エネルギーが手首を揺るがす反動となって迎撃に昇華される。散り飛ぶ火花がイムノの網膜を灼き、攻撃を弾かれた彼女の顔が驚愕に歪んだ。
「甘ェな!」
さらに、レッキン・クルー・ブルースは衝突の反動すら利用して、鉄塊のような機体を強引に捻る。
各部の装甲をきしませながら、遠心力を極限まで乗せたソバットを放つ。視界を塗りつぶすほどの広大な足裏が、イムノの脇腹へと深々とめり込んだ。
「がはっ……!」
全身を揺さぶる衝撃に、イムノが弾き飛ばされた砲弾となって空を裂き、後退していく。
そこにミーティスだ。これら一切の攻防を尻目に、裏口から敷地にするりと忍び込むように、
彼女は機体の肩へと飛翔する影を滑らせている。靴底で鋼鉄の起伏を捉え、あとずさり、
装甲の継ぎ目へ指を食い込ませて強引に慣性を殺すと、
内に振り上げた左手で扇状に展開した呪符の束を投げ放った。
風を切り裂いた札は装甲の合わせ目、駆動系が露出するμm単位の隙間へと吸い込まれ、
疑似的な意思を宿しながら電子回路への侵食を開始する。
「よし、そのまま行っちゃえ!!」
だが、コクピットのマミーDは不敵に唇を歪め、球体カバーの中で指を高速で走らせる。
「虫が、張り付いてんじゃねえッ!」
機体の炉心付近から、ヴォン、と大気を震わせる電磁的な駆動音が響く。
次の刹那、装甲のあらゆる間隙から、赤熱したエネルギーが全方位へ炸裂した。
侵入を試みた呪符は瞬時に炭化し、黒い塵となって虚空へ霧散する。至近距離で熱波を浴びたミーティスは、不可視の壁に正面から衝突したような衝撃に貫かれる。
「しまっ――くぅぅッ!」
制御不能となった彼女の身体は宙へ高く弾かれ、機体から強制的に排除されていく。




