issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 45
「おせちっっっ!!!」
ホットショットが咆哮した。全身に纏う炎を爆発的に膨れ上がらせ、
彼女が吹き飛ばされた方角へ向けて弾丸のように飛び出す。
「あいつを止めろ!あたしはおせちを!」
仲間たちへそう怒鳴り、ホットショットは空中で身をひねって軌道を変えると、
イムノが消えた方角へと急行する。目の前の敵を追うことよりも、姉妹の救出を優先した。
「ハハ! チェックメイトだ!」
マミーDは勝利を確信して操縦桿を押し込む。多脚戦車のアフターバーナーが爆炎を噴き上げ、
市街の中央タワーへ向けて一直線に突き進んだ。呼応するように、左右に並ぶ高層建築群が轟音と共に起動する。地中深くに食い込んだ杭を強引に引き抜き、泥とアスファルトを撒き散らしながら車道へ雪崩れ込んだ。
数万tもの鋼鉄が地面を踏み砕くたび、広範囲にクレーターが穿たれる。窓ガラスが建材の歪みに耐え切れず弾け飛び、降り注ぐ破片の雨を突き破って、摩天楼の壁が左右から迫る。それらは進路を塞ぐ断崖となり、わずかな空間すら押し潰そうと迫り来た。
「あぁぁぁあ!!はちるぅ、なんとかしてぇ!!」
ミーティスの泣き叫ぶような声が響き渡る。
「ん!まかせて!」
スヌープキャットは、この時既に加速していた。空中で手足を交差させ、
全身のバネを限界まで引き絞って次なる一撃のタメを作る。視界の両端では、
ビルとビルの壁面が慈悲もなく合わされようとしていた。彼女はその衝突点、
死の口が閉じる寸前の隙間へ狙いを定める。
「こじあけるよ――!!!」
彼女は振り払った両腕の、その小指側の鉄拳を左右の壁へ同時に叩き込んだ。
スヌープキャットの小さな拳が、迫りくる鋼鉄の断崖へ触れた。接触と同時、
天地を揺るがす轟音が炸裂する。摩天楼の外壁は、不可視の球体に抉り取られた大穴となり、
数kmの領域が瞬く間に内側へと深く湾曲した。限界を超えた負荷に、硬質な装甲板が音を立てて無数の亀裂を走らせる。次の瞬間、都市の構造物全体が内包した圧力に屈し、微塵に砕け散った。
剥離した幾億枚ものガラス片と装甲の破片が、爆風に乗って一気に舞い上がる。
それらは太陽光を浴びて虹色の光を乱反射させながら、空を埋め尽くして降り注いだ。
光景はさながら、風に巻かれた桜の花弁が視界を覆う、爛漫たる桜吹雪のようだった。
ふたつの凹面が生み出した銀色の谷間。その閉ざされた空間で、行き場を失った衝突エネルギーが、視認できるほどの密度をもって圧縮されていく。大気そのものが脈動し、やがて谷間の出口から、空間を歪ませる暴風となって前方へ解き放たれた。




