issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 44
その信号と連動し、銀色の都市がどよめきだす。高層ビル群が足元の基壇をコンクリートごと粉砕し、
凄絶な軋みを上げながら自律駆動を開始した。眠りから覚めた鋼鉄の楼閣たちが、
カルテット・マジコへ向けて殺意を露にする。建物の壁面が不快な金属音と共に左右へスライドして開放され、内部から昆虫の複眼を思わせる無数の砲身がせり出した。
出鱈目な回転のまま、きゅるきゅると上空まで舞い上がったホットショットが、強引に体勢を立て直し、驚愕の声を張り上げる。
「な、なんだよこれ!街が全部、動き出した!?」
「まずい、全方位から来る!」
中空を飛ぶイムノが鋭く警告した。刹那、赤いレーザーと青いプラズマ弾、
螺旋を描く榴弾が一斉に解き放たれ、空を光と黒煙の線で隙間なく埋め尽くす。
後続をつとめるミーティス、スヌープキャットの2人は、押し寄せる熾烈な弾幕を迎撃すべく即座に散開した。
「弾道が多すぎる!パターンを読んで、各個撃破!」
イムノはガンブレードを目にもとまらぬ速さで振り続け、迫る榴弾を空中で次々と撃ち落としていく。
「……みんな、私の後ろに!」
ミーティスは、空中に展開した呪符の円盾でビームの豪雨を防いだ。
さらにそのエネルギーの一部を敵の砲門へ向けて跳ね返し、自爆を誘っていくつかの砲台を沈黙させる。
「こっちに来るなー!!!」
スヌープキャットは飛来する砲弾を、あたかもボールでも弾くかのように剛腕で殴りつけ続ける。
三者三様の防戦を強いられて、彼女たちは、ひと息つく暇もない乱戦の渦中へ叩き込まれる。
混乱の極致にある戦場にて、突如、雲を突くほど高い摩天楼が、鉄骨とコンクリートを互いに削り合う不快な重低音を響かせた。中枢を貫くメインシャフトを回転軸として、タワーの上層部が水平方向へ強制的にスライドする。配管や鉄筋が引きちぎられる火花と共に、ダルマ落としの要領で分断されたフロアのブロックが、遠心力によって弾き出された。数1000tに及ぶ建築物の塊が、大気を断ち切る暴風を伴って回転する。豪胆な勢いと精緻なコントロールを両立させたその一撃は、3人へ向けて一直線に迫った。
「おせちっっ、前ッッ!」
ミーティスの叫びが響いた。しかし、全神経を弾幕の迎撃へと注いでいたイムノにとって、その警告は致命的に遅い。
「――うっっ!」
回避行動を取る間すらなく、旋回してきた鉄骨とコンクリートの塊が彼女の横腹を直撃する。
防御の構えを取ることも許されなかったイムノの体を、外壁がそのままどこまでも撃ち抜いていった。
耳をつんざくような破壊音と共に火花を散らし、彼方のビル群の谷間へと弾き飛ばされていく。




