issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 40
その直後、置き去りにされた呪符の壁が連鎖的に起爆する。紅蓮の火球が下から湧き上がり、
空を舐めるように追いかけた。だが、炎の舌先が捉えたのは、すでに上昇しきった機体が残した排気の熱だけだった。
「――もらったぁ!」
跳躍の頂点、無防備に晒された機体の頭上から、スヌープキャットが「死」そのものとなって降り注ぐ。彼女は自身の全体重と、高高度からの落下の運動エネルギー全てを組んだ拳に収束させ、
鋼鉄の天板へ向けて振り下ろした。
「なっ!?」
マミーDの反応は、思考の速度を超越していた。思念感応で動く多脚戦車が、
搭乗者の危機意識に直結して駆動する。4本の鋼鉄の脚が逆関節に跳ね上がり、
頭上の空中で一斉に収束した。剛腕を挟み込む、機械仕掛けの「真剣白刃取り」が完成する。
ガギィィィィンッ!!
小さな拳と強靭な4肢が激突した瞬間、鼓膜を引き裂く金属音が生まれ、
周囲の空気が衝撃波となって弾け飛んだ。
接触点から、太陽のフレアのようなまばゆい閃光と、赤熱した金属片が四方八方へ撒き散らされる。
スヌープキャットの拳が食い込んだ1点を中心に、受け止めた4本の脚の装甲が波打つように歪み、
塗装が焼け焦げて剥離した。過負荷に耐えかねた関節部のギアが悲鳴を上げ、隙間からリベットが弾丸のように弾け飛ぶ。
「ぐぅぅぉォォッ!?」
コックピットの中でマミーDが呻く。衝撃で展開していた光学モニターがかき消され、
火花を散らす計器類が真っ赤な警告灯で埋め尽くされた。スヌープキャットの小さな拳に込められた、
物理法則もへったくれもない圧力が、空中にある戦車の巨体をそのまま地面へねじ伏せようとする。
「この、化け猫がァッ!」
互いの全力が1点でせめぎ合い、その摩擦熱で接合面が赤熱して溶け出す。
プラズマ化した光の乱舞が、2人の間の空間を焼き焦がし、永遠にも等しい停滞を作り出していた。
その硬直の裏で、マミーDの思考はつとめて冷静にはたらく。彼は操縦桿のトリガーを強く握り込んだ。
機体の腹部、メインスラスターが、スヌープキャットの無防備な懐を、眼と鼻の先で捉えた。
「しまっ――!」
膨大な熱量を持つ推進剤の爆炎が、スヌープキャットの体を真正面から呑み込む。彼女は燃え盛る火球と化して後方へ弾き飛ばされ、銀色の荒野の彼方へと一直線に吸い込まれていった。




