issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 30
幾条もの光の軌跡が、天頂を焦がしながら駆け上がっていく。重力圏を置き去りに、
彼女たちは逆巻きの流星となって宇宙の深淵へと躍り出た。
高度40000km、静止軌道。そこは絶対零度の凍気と、濃密な闇のみが横たわる領域。
彗星の如く飛翔する戦士たちの肩越し、眼下には母なる星が丸裸で浮かんでいた。
その北米大陸に相当する地表から、無数の白い輝点――ナノマシン弾頭を搭載した100基以上のミサイル群が、毒々しい白煙の尾を引き、こちらを目指して這い上がってくる様が映り込む。
先陣を切るホットショットが、視界を埋め尽くすミサイルの白煙を前に息を呑む。
点ではなく、あたかも、面のごとく迫りくる弾幕の壁。その切実な光景に先行突入の判断を下しかけ、
彼女は一瞬だけ背後へと視線を走らせた。そこには、地球から宇宙の果てへと突き刺さる白亜の巨塔、
軌道エレベーターのステーションが、比類なき存在感を放ちそびえ立っている。
その刹那である。遥か下方、エレベーターの基部が根を下ろす赤道直下の地表から、
惑星の悲鳴にも似た振動が真空を伝い、この高高度まで駆け上がってきた。
『オラオラオラァッ!!根性見せな、ひょろ長いのォッ!!』
ニュー・ジャマメの大気を震わせるテラリアクイーンの絶叫。地上では赤土で構成された巨神が、
エレベーターの基底構造を剛腕で粉砕し、露出した太い根本をわし掴みにしていた。
「熱くても泣くんじゃないよッ!特製の『厚着』をさせてやるからなァ!」
接触点から、感染がはじまった。彼女の巨躯を構成するテラコッタの赤土が、
沸騰する泥流のように脈打ち、掴んだエレベーターの純白の外壁へと一気に雪崩れ込んだのだ。
唸りと共に流し込まれた膨大な土砂は、重力に逆らって塔の表面を駆け上がる。
それは生き物のような速度で硬化し、瞬く間に白亜の塔を、耐熱性に優れた分厚い岩盤の殻で覆い尽くしていった。
地表から宇宙へ、数万kmの距離を瞬時に駆け抜ける赤黒い侵食。エレベーターは今や、
繊細な科学の塔から、大気圏突入の業火にも耐えうる無骨な岩柱へと変貌を遂げていた。
「……ぬぅぅぅぅぅんッッ!!!!!」
いかめしい岩の相貌に極太の青筋を浮き上がらせ、彼女は大地を強く踏みしめる。全身全霊の力を込め、硬い衣をまとったその塔を「一本背負い」にすべく、強引に振り回した。
宇宙に浮かぶステーションが、未だかつてない揺動に襲われる。星の自転と遠心力が保っていた危うい均衡が崩壊し、装いを新たにした地球の象徴が、ゆっくりと、しかし決定的な角度で傾き始めた。
「……倒れるぞ!!」
ホットショットの咆哮が、真空と大気の境界線で砕けた。
彼女の網膜が捉えていたのは、この惑星が46億年かけて積み上げた常識の全否定だった。




