Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 04 21
その時、彼を守るものとして密集し、厚く層をなしていたドロイドの壁面が、一撃のもとに粉砕された。
スヌープキャットが、バタフライの泳法を想わせる雄々しい腕の広げ方で、この土壇場に堂々の乱入を果たしたのである。
すこし真面目な顔をして――破壊の権化と化した彼女の姿は、まるで大洋を苛む嵐を体現したかのよう。
粉塵が渦巻き、砕けた機械部品が彼女の進路を飾るなか、戦場は一瞬、その圧力にばかり支配された。
「くそっ……やるしかねぇか!」
プロディジーも覚悟を決める。背後の射撃型ドロイドに即座の動員をかけ、すぐ脇には長身の近接型を何体も従わせた。
機械の軍勢が一斉に動き出し、プロディジー自身はその先頭に立って、軍は、まるで大波を起こし返すかのように獣人の少女の方へと押し寄せていく。
ドロイドたちが巨大な獣人とともに飛びかかってくる様は激しいが、 スヌープキャットは眉ひとつ動かさず、身ひとつでその大群に真っ向から殴りかかる。
空気が震え、金属と肉体の咆哮が、戦場の中央で激しくぶつかり合った。
疾走するイムノは、ガンブレードのヒンジを器用に動かし、ひとつの特別な弾を装填するや否や、叫びをあげる。
「――ソイルッ!」
そこへ、狙いすました無数の砲火が一斉に放たれるが、電撃を帯びた身体の彼女は紙一重でそれらを空振らせた。次の瞬間には、もうビルの壁面を蹴っている彼女は、その、雷鳴めいた速度で軌道を直角に折り返しながら、真下の敵陣に斬り込んでいく。
紫電の後押しで1体をすぐさま斬り伏せ、着地の爆発的なエネルギーで周囲の敵を吹き飛ばす。
そのまま敵の隊列の内部を縦横無尽に駆け巡り、身の動きのすべてを刃に変えて、連続する斬撃を繰り出していく。1個小隊が各所から斬り裂かれ、機械の躯体が崩れ落ちる。
「大丈夫だった!? さな!」
「うん……でもさっき見たんだけど、やっぱりあの最初の穴から新しいロボットがどんどん出てきてる!」
崩落したアスファルト片の上、積み重なったアスファルト片の不安定な座椅子から助け起こされたミーティスはそのままイムノにお姫様抱っこされて、瓦礫の斜面をテンポよく駆け下りていく。
粉塵が舞い上がる中、ふたりは崩れた壁の奥、コンクリ片の迷路じみた隙間に身を沈める。
バヒュヒュヒュゥゥンッ!
直後、頭上すれすれを幾筋もの光線が、鋭利な軌跡を描いて疾走する。
壁の断面に焼け焦げを刻みながら、光条は空間を縦横無尽に貫き、爆音と振動が連続する。
ふたりの影は、瓦礫の死角に寄り添い、瞬く間に生まれる新たな敵影と、機械兵たちの足音を息を殺して見守った。
――敵の数が、戦場の隅々にまで目に見えて増えていた。
「……あと、札の枚数はどのくらいかな?」
ガンブレードを片手に持ったイムノが、あたりを警戒しながら聞く。
「もうあんまりないよ!2000枚くらい。このままじゃキャッシュレス決済になっちゃう」
「そっか。上見たときどうだった?敵はこの通りだけ?」
ミーティスが冗談(らしき事)を言う時は、天然かその気なのか判断がむずかしいこともあってしばしば流されることになる。
「……そだけど」
「なるほどね、それならチャンスは1回ってとこかな。よし、すぐ取りかかろう」
「え?」
「増援が出てくるルートを潰しながら、今いるロボットもまとめて倒せるのはさなのお札だけ。
でも、何かのはずみで敵がこの通りからバラけだしたらその手は打ちようがない。
だからね、さなにはこれから今からすぐやってほしいことを説明するよ」
「どんなの?」
「……簡単だよ!」
音もなく彼女たちの背後に忍び寄るなり、懐からヒートダガーを一斉に解き放って、
不意打ちで切りかかった敵の3体を、順に切り捨ててイムノは言った。




