issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 18
はちるは、膝上のモニターに明滅する無数の光点を睨む。それは、
庁舎周辺の携帯端末シグナルと生体反応を可視化した、リアルタイムのデジタルマップだ。
警報という名の羊飼いに追われ、光の群れは庁舎という檻から完全に追い立てられ、
そこには奇妙な空白地帯だけが黒々と残された。
バン脇、冷たいアスファルトの上。
すでに、変装用の装束は車の上に置き去りにしているアシュリーが、左肩をぐるりと回した。
その動作がトリガーとなり、彼女の周囲の空間が熱で陽炎のように揺らぐ。
次の瞬間、足元の舗装が赤熱し、爆ぜた。彼女は重力という枷を振り切り、紅蓮の推進剤と化し、
斜め上空へ向け、視界から消失するほどの加速で射出された。
それは、音の速さすら置き去りにする自分自身への第1投。街の風景が認識不可能な色の帯となって後方へ流れ去る中、ただ鮮烈な炎の航跡だけが、彼女がそこを通過した唯一の証拠として空に刻まれていく。
目標、政府施設高層階。第3会議室を覆う分厚い強化ガラスが、
外部から飛来したケタ外れの熱量と運動エネルギーの塊によって、飴細工のように歪み、砕け散る。
轟音が室内を蹂躙した。紅蓮の炎を全身に纏った隕石――ホットショットが、会議室の空間へと強引にねじ込まれる。衝撃波が室内を荒らし回り、重厚な会議卓が宙を舞い、機密書類が燃えさかる吹雪となって視界を覆い尽くす。その混沌の最中にさえ減速の素振りすら見せないホットショットの双眸は、
部屋の奥で硬直するひとつの人影を正確に捉えていた。
「信号、守らなかったけどよかったかな?」
彼女は、そう不敵に言い放ってネレネの懐へと滑り込んだ。
強引かつ滑らかな所作で腰と背に腕を回し、その華奢な体を軽々とかっさらう。
有無を言わせぬ、お姫様抱っこだ。
「ひゃあああああああ!!!」
ネ=レネの悲鳴が、熱風にかき消される。ホットショットは腕の中の獲物を確認してニヤリと笑うと、突入の勢いを殺さぬまま、進行方向に立ちはだかる反対側の壁面へと突っ込んだ。
粉砕されたコンクリートと鉄筋、そして爆ぜた火花が渾然となり、
ピラミッドの外壁から巨大な「破壊の王冠」となって噴き出した。
その瓦礫の装飾を内側から食い破り、2つの影が飛び出す。
熱と光の残像が街の遠景に雄大な放物線を刻み、仲間たちの待つ広場へと鮮烈な凱旋を果たしていく。




