issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 15
開かれたゲートの向こう側へ踏み入った瞬間、不可視の巨掌が襲いかかった。
ズゥンッ!
軽やかな紙片である耳目符は、抵抗する術もなく床面へと叩きつけられる。
舞うことも漂うことも許されない。まるで鉛の塊に変化してしまったかのように、
その場に縫い付けられていた。
「――!」
遠隔で知覚を共有するミーティスの視界には、何の変化も映っていない。床のタイルがひび割れたわけでも、空間が歪んで見えているわけでもない。その視覚的な平穏と、感覚器を押しつぶす物理的な重圧との乖離が、ミーティスの戦慄をいっそう深めた。
異常は重力だけではない。 肌を焦がすような、あるいは内臓を直接電子レンジにかけたような不快な熱と振動。高出力の電磁波が、部屋中を暴風のように吹き荒れている。 符を通じて伝わる圧迫感は、
筆舌に尽くしがたい。生身の人間がこの空間に放り出されれば、細胞が煮沸され、
1秒と持たずに絶命するであろう致死的な環境だ。
その死の箱庭の中、目の前に広がる光景はあまりに異質だった。
そこは、巨大な蝶が営巣した聖域のようだった。 天井から突き刺さるような白1色の照明が、
部屋の隅々までを冷徹に暴き出している。
部屋を構成する3方の壁という壁から、無数の白い帯が伸びていた。 それは特殊繊維で編まれた包帯のようであり、厳重な拘束具のようでもある。壁面から吐き出された幾千もの白いラインは、
たわむことなくピンと張り詰め、部屋の最奥にあるたった1点へと収束していた。
全方位から締め上げられ、空間の中心で磔にされている人影が1つ。
ぐるぐると無骨に巻き固められたその姿は、まさしく人型の繭だ。 白1色の拘束の隙間から、頭部だけが露出し、力なく垂れ下がっている。その顔を、見間違えるはずがない。
母、尊だ。




