issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 12
一方……。
その喧騒から隔絶された、バンの最奥部。 食材の段ボールと保冷庫に囲まれた狭いスペースに、
さなはお手本のような端座位で座り続けていた。周囲の雑音から意識を切り離した彼女は、
深く、静かな呼吸を繰り返している。閉じた瞼の裏に浮かぶのは、自身の視覚ではない。
遠く離れた場所にある、「第3の眼」から送られてくる映像だ。
意識の焦点が、バンの外へと飛ぶ。広場を抜け、検問をパスし、
白亜に輝く巨大なピラミッド――世界統一政府総統府のロビーへ。
そこを歩くネ=レネ・ココ。 彼女の着ているパンツスーツ、そのポケットの中に、
さなの分身は潜んでいた。Issue 01の市街戦でも使用した「耳目符」。
特別な紋様の走った紙片が、ネ=レネの歩行に合わせてカサカサと震える。
『……ようこそおいでくださいました、特使殿』
儀仗兵の挨拶が、クリアな音声としてさなの脳内に響く。ネ=レネが頭を下げた、その一瞬の隙。
「……よし、そろそろだね!」
さなが小さく呟く。ポケットの縁から、それは音もなく飛び上がった。ふわりと風に乗り、
誰の目にも留まらぬ速さで床を滑り、壁面の通気ダクトの隙間へと吸い込まれていく。
視界が、ロビーの光からダクトの闇へと切り替わる。冷たい人工の風が吹き抜ける、
狭く入り組んだ金属の迷宮。 さなは意識を研ぎ澄まし、紙の翼を羽ばたかせた。
(……探さなきゃ。おかーさんと、テラリアの王様たち。このおっきな建物の地下に、いるってマクちゃんが……!)
表の陽気なアイスクリーム屋のBGMを遠いBGMとして聞きながら、さなは孤独な斥候として、
敵の中枢深くへと潜航を開始した。




