issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 11
そんな怒号が飛び交うバンの外では、両手に風船を持つ着ぐるみのマスコット(?)が、子供たちの相手をしていた。白と黒の毛並みを持つ、2足歩行の動物。 どう見ても「本物」の獣人なのだが、派手なサングラスと「I LOVE ICE」と書かれたTシャツを着ているせいで、誰もが精巧な着ぐるみだと信じ込んでいた。
「わあー、ふわふわだー!」
「すげー!この毛、本物みたい!」
子供たちが群がり、彼女の体をペタペタと触る。その中の1人が好奇心にかられ、
マスコットのすねを思い切り蹴り上げた。
ボフッ!
「……」
乾いた音が響いたが、はちるは眉一つ動かさなかった。戦車砲すら弾き返す彼女の鋼鉄の肉体にとって、子供のキックなど、蚊が止まった程度の実害もない。だが、子供たちの猛攻はそこで終わらない。
「ねえねえ、中に人入ってるんでしょ?」
「おーい、動けよー!」
「尻尾引っ張ってみようぜ!」
グイグイと自慢の毛並みを引っ張られ、腰を突き飛ばされ、あらぬ方向からタックルを食らう。
肉体的な痛みはない。しかし、それはそうとして忍耐力を求められる扱いではある。
「ここで正体がバレてはいけない」という使命感が、彼女にギリギリの自制を強いていた。
(……まだやるのぉ!?もう10回目だよキミぃ!)
「あはは……!妖精さんはお友達だからねー!蹴ったりしちゃダメだよー!中にオジサンとか入ってないからねー!」
サングラスの下、引きつった笑顔で手を振りながら、内心では血の涙を流す。
潜入作戦とは、時に肉体的な戦闘よりも過酷な精神修養を強いるものだった。




