issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 08
「……ッ!?」
その致命的なエラーを、別室のモニター越しにようやく確認したのは、
世界の支配者気取りで弛みきった時間を貪っていた「モブ・ディープ」の面々だった。
「お、おい!何やってんだあのボンクラ!」
ドアの開け放しになった部屋の前を通るなり、ハヴォックがドタドタと巨体を揺らしてコントロールルームへ飛び込んでくる。その姿に、威厳など欠片もない。素肌にタンクトップとトランクスをだらしなく履いて、片手にはチーズが糸を引く食いかけのピザが握りしめられている。彼は執務などとう放り出し、優雅な休息を決め込んでいたのだ。
続いて、兄弟分と同じような恰好をしたプロディジーも、顔面を蒼白にして駆けつけてきた。
「……おい、ヤバいぜ兄弟!こりゃ演技とか故障ってレベルじゃねえ!AIの論理回路が完全に焼き切れてやがる!」
画面の中では、総統の威厳ある顔面がノイズでひしゃげ、支離滅裂なワードサラダを吐き出し続けている。
「バカ野郎ども!なんで条約機構との会談なんてこの大事な時に、誰もアレを監視してるヤツがいねぇんだ!?」
遅れてやってきたカーディBが、怒声と共に天井付近から急降下した。
黒い翼が空気を切り裂き、コンソールへと着地する。
「今すぐマニュアル操作に切り替えろ!マイクを貸せ、俺が喋る!」
彼は翼の先で乱暴にスイッチを叩き、暴走するシステムへ強引に割り込んだ。
総統府・執務室。 狂った献立を読み上げ続けていたシャカゾンビの動きが、不自然にピタリと止まった。ジジジ……というノイズの後、その姿勢が、どこかチンピラじみた猫背へと微妙に変化する。
『あー、ゴホン!……失敬した』
スピーカーから響く声色は、先ほどまでの重厚なバリトンとは似ても似つかない、
しゃがれた、そして隠しきれない軽薄さを帯びたダミ声だった。
『システムの、その……調子がちと悪くてなァ。今の「天ぷら」とかいうのは忘れてくれ。……で、何の話だったか?』
ネ=レネは、眼鏡の奥の瞳をすぅっと細めた。そのあまりに露骨な声質の変化。そして、滲み出る品性のなさ。彼女は、目の前の存在が、自律思考するAIから、遠隔操作されるただの操り人形に成り下がったことを瞬時に悟った。
「……イントネーションが急に変わりましたね。ええ、存じていますよ。あなたが『モブ・ディープ』の……ハヴォックさん、プロディジーさん……あるいは、カーディBさんという方だということを」




