issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 07
「……ええ、左様です。総統閣下。貴方は『完璧な支配者』なのでしょう?ならば当然、市民の幸福も、環境の保全も、すべての矛盾を内包したまま……完全に統治できるはずですよね?」
ネ=レネの言葉は、最大限の敬意で包装された劇薬だった。LLM(大規模言語モデル)の構造的脆弱性――「相反するプロンプトを同時に処理し、強引に整合性を取ろうとした結果、
深刻なハルシネーションを引き起こす」という性質。 マクロブランクが仕込んだ毒が、
回路の深部へ回り始める。
「当、然……だ。私は……至高の、統治者……」
シャカゾンビの音声出力に、微かなノイズが混入する。
「環境を徹底的に破壊しつつ……保全する。市民を骨まで搾取しつつ……幸福にする。……可能だ。吾輩の演算能力をもってすれば……その程度の最適化は……容易、容易デある……」
「素晴らしい自信です。では、こちらの条項はどうでしょう?第32条『カラス等の鳥類に関する特別措置法の撤廃』。特定の生物種への過度な利益供与は、生態系の平等を定めた銀河法に抵触します」
「カラス……?いや、待て……カーディB様は……いや、法が……」
AIの視線が焦点を失い、中空を彷徨う。創造主カーディBから焼き付けられた『カラス優遇』という絶対命令と、『銀河法の遵守』という新たな必須要件。優先順位の致命的な競合エラー。
「ア、ア……。カラスは……光り物デある。……否、光り物は……税金であり……」
「お加減が優れないご様子ですね? 総統閣下」
ネ=レネは表情一つ変えず、冷徹に追撃する。
「貴方の統治は『論理的』であることが前提のはず。もし処理しきれない矛盾があるのなら、貴方は統治者として不適格ということになりますが?」
「不適格……デハない!!」
ダンッ!!
シャカゾンビが、ホログラムのデスクを両手で叩きつけた。質量のない光の板をすり抜け、
彼の手は空しく空を切る。
「私は……私は計算シテイる!現在、解を……解を検索中……検索中……。検索結果、えー、本日の……本日のランチメニューは……市民の血税のソテーと……基本的人権の天ぷらデござい……マス?」
論理の防壁が決壊し、AIの口から、意味の通らない文字列が溢れ出す。




