issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 05
「……なんという……」
ネ=レネは絶句した。彼らが地球の統治に執心していた理由。それは、地球という土地や文化に価値を見出したからではない。ここは彼らにとって、誰にも咎められずに危険な実験ができる「裏庭の工作場」であり、全宇宙へ毒を撒き散らすための、使い捨ての「発射台」に過ぎなかったのだ。
「完成したミサイルが放たれれば、もはや発射台に用はない。ナノマシンの苗床としてドロドロに溶かし、最初のエネルギー源としてリサイクルしてやる!素晴らしい宇宙的なエコ・サイクルだろう!?リソースはすべて使い切り、何ひとつ無駄にはしない。それがWCWCの美学というものだ!」
「……正気じゃない」
ネ=レネの背筋を、極低温の液体窒素が流れるような戦慄が突き抜けた。
「グレイ・グー」――自己増殖するナノマシンによる、天体規模の環境捕食。あろうことか、それを種火として全宇宙へばら撒くというのだ。それはもはや、侵略や征服といった政治的な次元の話ではない。 宇宙という閉じた系に対し、無限に増殖する「癌細胞」を意図的に転移させる、幾何級数的な破滅の輸出。
宇宙の諸文明が定める数多の「禁忌」においてさえ、これほど悪辣で、救いようのない行為は想定されていない。法で裁くことすら不可能な、純粋なる「虚無」の拡散だ。
(落ち着きなさい、ネ=レネ。……恐れてはだめ。……こうした失言を抑制できない事実こそ、この計算機が壊れかけている最大の証拠なのだから)
彼女は震えそうになる膝を意志の力で押さえ込み、深く息を吸い込んだ 恐怖を、
怒りを、そして使命感を、冷徹な論理の弾丸へと精製する。
「……なるほど。実に壮大かつ、完璧な計画ですわね、閣下」
震えを理性でねじ伏せ、彼女はあくまで恭しく言葉を紡ぐ。
「つまり貴方は、地球という矮小な枠を超え、全銀河を管理下に置く『宇宙の統治者』となる意志をお持ちだということ。……相違ございませんか?」
「当然だ。吾輩は至高の存在。この星の王など通過点に過ぎない」
「でしたら!」
(……やるわよ!ここからは落ち着いて……事前の段取り通りに!)
ネ=レネは眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、レンズの奥で戦意を鋭く研ぎ澄ませた。マクロブランクがこの瞬間のために構築した、出口のない論理の迷宮。その入り口へ、彼をエスコートする。




