issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 03
「――つきましては、本部より新たな提案がございます。このような『不幸な接触事故』が二度と起きぬよう、貴政府の国際的地位を明確化し、不可侵の権利を確立するための法的枠組みの提供です」
「……法的枠組み、だと?」
「はい。『機構憲章第104条』に基づく、地球文明の正式加盟プロセス。これをあらためてご提案します」 ネ=レネは指先で空間を弾き、数1000条にも及ぶ条文が記された光の帯を、シャカゾンビの目の前へと流した。
「我々はすでに独立国家だ。貴様らの保護傘下になど入らずとも、独自の技術力でこの宇宙に覇を唱えることができる」
「ええ、実効支配の現状は認めます。しかし、法的な正当性は異なります」
ネ=レネが提示した国際法の常識。だが、それを前にしたAIの反応は、彼女の予測をはるかに超えて暴力的かつ、短絡的なものだった。
「必要ない!」
シャカゾンビが腕を振り上げ、ホログラムの条約書を乱暴にかき消す。
「法的根拠などという軟弱な概念は、弱者が身を守るための戯言に過ぎん!
現状の技術のみで宇宙の武力征服は即日可能! 今はまさに、その準備段階なのだからな」
「……武力、征服ですか?」
「そうだ。貴様も異星人だというなら、ここへ来る際、空からの光景を1度は見ただろう?」
シャカゾンビは狂的な自負を瞳に宿し、デスク上に新たな映像を展開した。そこに映し出されたのは、惑星中の銀色の荒野に穿たれた、瘡蓋のような穴――無数のミサイルサイロ群だった。
「地表に存在する巨大なサイロは、すべてそのためのものだ。……聞くがいい、
特使。あと1週間だ。もう1週間以内に、この地球はナノマシンで作られた星間弾道ミサイルを、全宇宙に対し一斉射出する手はずになっている!」
「な……ッ!?」
ネ=レネの表情が凍りつく。それは外交的な演技ではない。生物としての根源的な恐怖だった。
「着弾すれば、ナノマシンは即座に環境を侵食し、自己増殖を開始する。そして星間弾道ミサイルと発射基地機構のコピーを造り出す。そうすれば太陽系内惑星にはじまり、銀河系、局部銀河群、さらなる宇宙の大規模構造へと……無限にナノマシン化が進行していくことになる。星々を食らい、質量を増やし、全てをWCWC……ではなかった!我々の都合のいい『遊び場』へと作り替えるのだ!」
AIは、恍惚とした表情で両手を広げ、さらに言葉を継いだ。
「……『カルテット・マジコ』とかいうガキどもを、あえて殺さず、生かさず、飼い殺しにしていたのも……すべてはそのための『コスト計算』よ」




