issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 54
日記
ほらな?言った通りノルウェーが勝ったろ?
瞬間、雑然としていたはちるの部屋が、数10日ぶりに本来の――いや、それ以上に張り詰めたひとつの属性を帯び始める。散らばったスナック菓子の袋も、清掃用具も、その空気の中では戦時の備蓄へと様変わりする。いつの間にかその場所は、カルテット・マジコの「作戦司令室」としての顔を取り戻していた。
「……見えてきよ。テラー・スクワッドの倒し方が」
おせちがの視線が、円陣を組む仲間たち――そして、その一角にいる異星の交渉官へと向けられた。
「方法はいたってシンプルさ。持ちうるすべてを同時にぶつける」
彼女はネ=レネに向き直り、淡々と、しかし重みのある言葉で切り出した。
「まずネ=レネ。君の真の身元……『星間条約機構・地球文明担当特命駐在官』という肩書きを、
世界政府に対し正直に明かしてもらう。そこからすべてを始めよう」
「私の、身分を……?」
「うん。そして、先日のゴチェヌコイによる襲撃騒ぎが、星間条約の枠組み内で行われた『自作自演』の出来レースだったことを、現政府に対して正直に告げるんだ。その上で、地球側との加盟交渉の席を、
正式な手続きで『やり直す』と宣言してほしい」
おせちの提案に、部屋の空気が一瞬だけ固まる。それは、彼女が単なる迷子ではなく、地球の命運を左右する外交官として矢面に立つことを意味していた。シャカゾンビやWCWCが、黙ってそれを見過ごすはずがない。
「……極めて危険な賭けになります。私は、標的になるでしょう」
ネ=レネは一度だけ長く睫毛を伏せ、そして顔を上げた。その瞳に迷いはない。
そこには、外交官としての誇りと、友を守るという決意が宿っていた。
「ですが、それこそが私がこの星に来た理由であり、義務です。……やらせてください、おせちさん」
力強い承諾を得て、おせちは深く頷く。だが、作戦にはまだ致命的な懸念事項が残されていた。
「ありがとう。……で、次は物理的な脅威の話。マクロ、ナノマシンの制御権を持ってるのは誰?」
「現状では、シャカゾンビのAIそれ自体にありまちゅ。誰かがAIに命令をして、間接的に動かさせる仕組みになってるでちゅね」
マクロブランクは触手を振りながら解説する。
「やっぱりね」
「ただ、そもそもアレを開発したのはWCWCでちゅ。奴らはAIなんか介さずに、独自かつ直接的に動かす権限を常に握っていまちゅ」
「つまり、AIを破壊しても、WCWCが直接介入してきて、私たちを圧殺しに来る可能性があるってこと?」
おせちの指摘に、アシュリーが舌打ちをする。
「なんだよ、結局それなら詰みじゃないのか?あの銀色のヘドロが全部襲ってきたら、いくら私らでも支えきれないぞ」




