issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 45
「……っ、う……」
その苦悶の声に反応し、雪よりも白い掌が、同じ色合いの光を放った。
それは凍えた組織の奥底へと染み渡る癒やしの波動。彼を蝕む痛みと寒さを、
慈雨のように優しく鎮めていく。
「早く帰って、お風呂に入れてあげよ!あったまらないと!」
はちるが、悲痛な声を張り上げた。その瞳は激しく揺れ、変わり果てた友人の姿に動揺を隠せないでいる。だが、それ以上に、彼にいま1番必要な温もりを与えようと必死だった。
「どこ行ってたの?マクロ……今までさ」
おせちもまた、雨に濡れた前髪を払うこともせず、憂いを帯びた瞳で彼を覗き込む。
そこには、責める色など微塵もない。ただ、長い不在を案じ続けた姉のような安堵だけがあった。
4人の体温が、雨の冷たさを遮断する壁となって彼を囲む。ここはもう、冷たい路地裏ではない。
石を投げられる場所でも、野良犬に追われる荒野でもない。
「あ……あぅ……」
己が身を苛むほどの同情をもって顔を歪め、彼の痛みに寄り添う少女の腕の中。
そこでマクロブランクは、行き場をなくしていた感情を、声なき声として吐き出した。
多元宇宙さえ捕食しかねない絶大なる意識――その中核が、いまや決壊した感情の熱量に抗う術を持たず、ただ嗚咽となって溢れ出すそれを、御することさえできずにいた。
彼は、泥だらけの触手で少女の服を握りしめ、降りしきる雨の音にかき消されるようにして、
いつまでも泣き続けた。
*
現在、はちるの部屋には、温風の音と、香ばしい油の匂いが充満している。
「はい、じっとしててくださいねー♪シワの奥までしっかり乾かさないと、風邪ひいちゃいますからねー♪」
さなは聖母のような微笑みをたたえ、正座の膝元に置いた奇怪な生物――マクロブランクに対し、甲斐甲斐しくヘアドライヤーを当てていた。
温かな風を受け、湯治を経てなお、どこか黒ずんだままだった彼の大脳皮質は、次第に本来の艶やかなピンク色を取り戻していく。だが、そのVIP待遇を受ける当の本人は、
感動に浸るよりも食欲を満たすことに全霊を注いでいた。
「ハフッ、ムグッ……!うま、うまい……!染みるでちゅ、油と塩分が脳髄に直撃するでちゅ……!」
両の触手に1本ずつ持ったコンビニのホットスナック、Lチキ。彼はそれをむさぼるように齧り付き、
あふれ出る肉汁と衣の破片を畳の上に撒き散らしている。地獄の逃避行を終えた彼にとって、
この温風とジャンクフードの組み合わせは、まさしく至高の極楽だった。




