issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 42
そう。彼女たちは正義の味方だ。無意味な言葉など吐くはずがない。
あれは、「もしもの時は、そうして待っていろ。そうすれば必ず見つけ出す」という、
彼女なりの不器用な契約だったのだ。
すでに曖昧な意識の中で、かろうじてはじき出された、未来への最適解。
「……信じるでちゅ。わちきは、あの言葉に賭けるでちゅよ!」
マクロブランクは、最後の力を振り絞って立ち上がった。彼は近所のスーパーマーケットの、トラックが行き交う裏手から、手ごろなミカン箱をひとつ調達する。ずるずると、片腕で引っ張りながら人目のつかない場所まで、そして、ゴミ捨て場のマジックを触手で器用に操り、箱の側面に、魂を込めた文字を刻み込んだ。
『拾ってください』――。
彼はその1筆に、残された僅かな希望のすべてを託した。彼が箱を担いでたどり着き、
新たな「家」と定めたのは、喧騒渦巻く駅前ロータリー、その植え込みの僅かな隙間だった。
1日目。都市は彼を黙殺した。視界の端に異物を捉えても、関わらぬが吉と誰もが目を背ける。
千鳥足の酔っ払いがつまずき、汚い言葉を吐き捨てていったのが唯一の「会話」だった。
2日目。氷雨がアスファルトを叩いた。命綱である段ボールが水を吸ってぶよぶよに腐り、
マジックのインクが黒い涙となって垂れ落ちる。しかし、彼は微動だにしない。
修行僧のごとき静止で、ただ雨粒に打たれ続けた。
3日目。通りがかった女子高生の群れが、スマホのレンズ越しに彼を嘲笑う。「キモーい」「ウケる」。デジタルな嘲笑の礫。だが、彼は耐え忍ぶ。この屈辱の先にこそ、乱暴だが懐かしい少女たちの声が降ってくると信じていたからだ。
空腹で視界が歪み、寒さで思考回路がノイズに埋もれる。それでも、ここを動くわけにはいかない。
それでも彼は動かない。ここを動いてしまえば、あの一縷の望み――「符丁」の効力が切れてしまう気がしたからだ。
(来るはずでちゅ……。あいつらは、絶対に……)
世界から弾き出された脳髄の怪物は、滲んで判読不能になりかけた『拾ってください』の文字の上で、うつらうつらと明滅する意識の中、ただひたすらに約束の時を待ち続けた。
そして4日目。 均衡は唐突に崩壊した。きっかけは、彼の異形に遅まきながら気づき、生理的嫌悪からの悲鳴を上げた1人の主婦だった。恐怖はパンデミックのように伝染する。
「化け物だ!」と叫ぶサラリーマンの投石。遠巻きに警棒を抜く交番の警察官。世界が明確な敵意を持って、彼を排除にかかった。
マクロブランクは、箱を抱えて逃げ出した。だが、迷い込んだ住宅街の路地で、濡れた段ボールの匂いが、飢えた野良犬たちへの撒き餌となった。剥き出しの牙。囲まれる恐怖。




