表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#05 I I I Why Can't We Be Friends?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
607/686

issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 42

そう。彼女たちは正義の味方だ。無意味な言葉など吐くはずがない。

あれは、「もしもの時は、そうして待っていろ。そうすれば必ず見つけ出す」という、

彼女なりの不器用な契約だったのだ。


すでに曖昧な意識の中で、かろうじてはじき出された、未来への最適解。


「……信じるでちゅ。わちきは、あの言葉に賭けるでちゅよ!」

マクロブランクは、最後の力を振り絞って立ち上がった。彼は近所のスーパーマーケットの、トラックが行き交う裏手から、手ごろなミカン箱をひとつ調達する。ずるずると、片腕で引っ張りながら人目のつかない場所まで、そして、ゴミ捨て場のマジックを触手で器用に操り、箱の側面に、魂を込めた文字を刻み込んだ。


『拾ってください』――。


彼はその1筆に、残された僅かな希望のすべてを託した。彼が箱を担いでたどり着き、

新たな「家」と定めたのは、喧騒渦巻く駅前ロータリー、その植え込みの僅かな隙間だった。


1日目。都市は彼を黙殺した。視界の端に異物を捉えても、関わらぬが吉と誰もが目を背ける。

千鳥足の酔っ払いがつまずき、汚い言葉を吐き捨てていったのが唯一の「会話」だった。


2日目。氷雨がアスファルトを叩いた。命綱である段ボールが水を吸ってぶよぶよに腐り、

マジックのインクが黒い涙となって垂れ落ちる。しかし、彼は微動だにしない。

修行僧のごとき静止で、ただ雨粒に打たれ続けた。


3日目。通りがかった女子高生の群れが、スマホのレンズ越しに彼を嘲笑う。「キモーい」「ウケる」。デジタルな嘲笑の礫。だが、彼は耐え忍ぶ。この屈辱の先にこそ、乱暴だが懐かしい少女たちの声が降ってくると信じていたからだ。


空腹で視界が歪み、寒さで思考回路がノイズに埋もれる。それでも、ここを動くわけにはいかない。

それでも彼は動かない。ここを動いてしまえば、あの一縷の望み――「符丁」の効力が切れてしまう気がしたからだ。


(来るはずでちゅ……。あいつらは、絶対に……)

世界から弾き出された脳髄の怪物は、滲んで判読不能になりかけた『拾ってください』の文字の上で、うつらうつらと明滅する意識の中、ただひたすらに約束の時を待ち続けた。


そして4日目。 均衡は唐突に崩壊した。きっかけは、彼の異形に遅まきながら気づき、生理的嫌悪からの悲鳴を上げた1人の主婦だった。恐怖はパンデミックのように伝染する。

「化け物だ!」と叫ぶサラリーマンの投石。遠巻きに警棒を抜く交番の警察官。世界が明確な敵意を持って、彼を排除にかかった。


マクロブランクは、箱を抱えて逃げ出した。だが、迷い込んだ住宅街の路地で、濡れた段ボールの匂いが、飢えた野良犬たちへの撒き餌となった。剥き出しの牙。囲まれる恐怖。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ