issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 40
「うん、このままじゃ……やっぱダメだよ。みんなもう限界だよ!」
はちるが、アヒルを爪の先で押し飛ばす。その余波で、
プラスチックのカラフルなボールたちが音もなくあちこちへと漂っていった。
「それなら……」
アシュリーが溜めを作り、
「黄色いアヒルの車で一気に行ってみるか?短距離ワープで、向こうの司令部に直でカマすんだ」
まだ落ちてきそうな気配のある天井の結露を睨み、呟くように言う。
「それはだめだと思うな……一瞬で決着はつくことはさすがにないだろうし」
さなが膝を抱え、湯に顔を沈めて恨めしそうに泡を立てた。彼女たちの持つ圧倒的な力は、敵を粉砕することには長けていても、システムに組み込まれた人質を無傷で救い出せるほどの器用さを持ち合わせていない。
動けば人が死ぬ。動かなければ、緩やかに自由が死ぬ。完全なる詰みの状態。
その認識が、熱気とは別の重苦しさとなって浴室の空気を圧迫していた。
手持ちぶさたになったアシュリーは、防水仕様のスマートフォンを湯船の縁から引っ張ると、
縁に頭を預けて無感情に画面をスクロールさせ始めた。
「……やっぱみんなも、今の生活、もう限界なんだな。タイムラインが葬式会場みたいになってる」
彼女の指先が、惰性で画面を弾く。流れていくのは、逮捕された友人の安否を気遣う声、銀色の都市や大地への呪詛、そして諦めの言葉。その中に混じって、時折、新政府のプロパガンダや、
直接の被害から遠い地方の、呑気な投稿がノイズのように紛れ込む。
「……ん?」
不意に、アシュリーの指が止まった。 彼女は画面を睨みつけ、眉間の皺を深く刻むと、
親指と人差し指で画像を拡大した。
「おい、お前ら。……ちょっとこれを見ろ」
「何?またカラスが宝石を盗んだ動画?」
「いいから見ろって――」
アシュリーの背後へ、湯をかき分けて顔を寄せる3人。投稿元は、日本人と思われる匿名のアカウント。何気ない日常の風景として切り取られた、ただの1枚の写真だ。
だが、その被写体こそが異質だった。画角の中央に捉えられていたのは、世界中の誰もがただの背景として見過ごしたとしても、彼女たちだけは決して無視することのできない、
数奇な因縁で結ばれた特別な存在。
この時、
「これ……」
「嘘でしょっ!」
4人の声が、浴室の反響音と共に重なった。




