issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 34
「このフューチャー・ラボだがよぉ、やっぱり今のキャパじゃ足りねぇや!ロッキー山脈のあたりまでもらうことにするぜ!!さっさとお触れを出しな。地図なんてモンは、俺たちが壊したあとに書き直せばいいんだよ!」
矛盾。競合。処理落ち寸前の過負荷。待機状態にあるレディオヘッドの顔面骨格が、カタカタと不気味に痙攣し、眼窩の光が明滅する。「泥の粘度」と「特区の拡大」と「カラスへの絶対服従」を同時に、
かつ最優先で実行せよという命令は、電子頭脳の中で致命的なハルシネーションを引き起こしていた。
繰り返すが、この組織にはもうストッパーが存在しない。この頃を境にして、
世界中のニュース映像は、彼らの「いい加減さ」が招いた地獄絵図――泥に沈む集落、
カラスにアルミホイルを捧げる市民、そして重機に削り取られる山脈の姿を、
明日の天気予報のように淡々と映し出すようになっていった。
*
北米大陸の地平線は、積み上がった鉄の巨塊で隙間なく埋め尽くされていた。
「未来技術実証実験都市」の異名を取るその地は、
いまや全土が轟音と排気ガスに満ちた、ひとつの巨大な工事現場と化している。
その中枢――土の大地には、管制ユニットが据えられていた。
安全ヘルメットを斜めに被ったマミーDが、ユニットという土台から枝のごとく浮かび上がる光子モニター群を前に、各地の混沌とした情勢を満足げに眺めている。
「そろそろ取れるデータも取り尽くしたってトコロかァ……」
彼は独り言のように呟き、別のモニターを指先で呼び出した。
「噂のカルテット・マジコとやらも……結局、エンストしたダンプみたいにピクリとも動かねぇままだったな。最初はさっさととっちめちまうのがいいと思ったが、テラー・スクワッドの連中、予想以上に上手く手懐けてやがる。ナノマシンの権限を半分くれてやるだけで、俺たちの『本工事』に一切ケチがつかねぇんなら、安い外注費で済んだもんだぜ」
「しかも、こっちが裏で何をやらかそうとしてるか、まったく聞いてきやしねぇんだから、楽なもんさァ……」
北米実験都市でのデータ収集は概ね完了し、地上への混乱の種蒔きも十分な成果を上げた。
となれば、次に行うべきは「商圏」の拡大である。




