issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 32
薄暗い室内。 おせちは、はちるの部屋でこたつに半身を埋め、
赤地に黒襟の半纏をすっぽりと羽織っていた。
丸めた背中の先、モニターの前に引きずりだされているのは、
半世紀以上も昔に製造された骨董品――色あせたグレーの筐体を持つ、
スーパーファミコンだ。 彼女は、プラスチックの黄ばんだコントローラーを握り、
赤、黄、青、緑の4色ボタンを惰性で押し込み続けている。
画面の中では、16bitの、粗いながらも創造性に満ちたドット絵で描かれた勇者が、
弱い魔物を相手に一方的な蹂躙を繰り返していた。
差し込まれているのは『ドラゴンクエストVI』のカートリッジ。ビデオラックの奥底から発掘したそのカセットは、隠しボスのダークドレアムさえ20ターン内に討伐され、世界に平和が取り戻されて久しい。
ムドーも、デスタムーアも、その他解決すべき問題も何ひとつ残されていない世界。
そこでただ、カンストを目指して経験値という名の数字だけを積み上げていく、
目的のない作業。ピロリ、ピロリと鳴る無機質な電子音だけが、澱んだ室内の空気を空しく揺らしていた。
「ただいまー」
そこへ、濡れた匂いをさせて3人が帰ってくる。
「……お帰り」
はちるが無言で差し出した「バツ印」の封筒を見て、
おせちはコントローラーを置き、小さく息を吐いた。
言葉はいらない。全員が顔を見合わせ、無言で頷き合う。
今日も、何も変わらなかった。明日もまた、このぬるま湯のような日常が続くのだろうか。
……何も起きないことへの焦燥。真綿で首を絞められるような閉塞感が、部屋の隅々から忍び寄り、
彼女たちの心を少しずつ、しかし確実にむしばみつつあった。




