issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 30
そこからは、坂道を転げ落ちるような転落人生のダイジェストである。
アジアのとある港湾都市。 荷揚げされたコンテナの裏から、
ドロドロに溶けた脳味噌のような生物が這い出てきた瞬間、検品作業員の悲鳴が響き渡った。
「バケモノだーッ!!」
「違うでちゅ!善良なエイリアンでちゅ!」
鉄パイプを持った警備員たちに追い回され、命からがら逃げ出すマクロブランク。
言葉も通じず、通貨も持たない彼は、ただ東へと追いやられていく。
――灼熱のインド、ガンジス川。
悠久の時を刻む聖なる大河、その泥褐色の濁流に揉まれ、
ひとつのピンク色の異物がゆっくりと流れていく。祈りを捧げる巡礼者や、
灯籠流しの燈火とは異質の存在だ。極限の飢餓と疲労、そして不衛生な水を含んでしまったことによる体調不良。それらが、口端からカニのごとく大量の白泡を噴き出し、白目を剥いて漂流するマクロブランクの姿を形作っていた。
「……あ、あ……。見える……見えるでちゅ……。あれがクラウド・ストレージ……いや、涅槃……」
母なる河の圧倒的な水量は、彼の意思を無視して肉体を下流へと押し流す。
熱病に侵された頭脳において、彼岸の幻覚とサーバーのエラー画面は区別なく混線していた。
――さらに月日は流れる。
舞台は中国、雲南省の山間部。
「待てェーッ!この泥棒妖怪め!」
「ひぃぃぃッ!たかがトウモロコシ1本で、命まで奪う気でちゅかーッ!?」
雲海を反射する美しい棚田の風景を、怒り狂った農夫たちの咆哮と、転がる脳髄の悲鳴が切り裂いていく。マクロブランクは、もぎたてのトウモロコシを大切な宝物のように触手で抱え込み、泥だらけになってあぜ道を疾走していた。
背後には、鈍く光るクワやカマを振り上げた村人たちが迫る。明日の糧を求める卑しいコソ泥としての生存本能だけが、彼を突き動かしていた。原始的な農具の切っ先が与える恐怖。それが現在の、彼にとっての現実の最先端であり、彼はただの害獣として逃げ惑う。
国境を越え、風景が変わっても、運命はあいかわらず澱んだままだ。無為に過ぎ去る時間の中、
肥大したプライドは、道端の石ころのように削り取られ、小さく萎んでいくばかりだった。




