issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 28
ガシャァン!
天井から降ってきた鋼鉄の檻が、彼を完全に閉じ込めた。
「な、なんでちゅかこれは!?」
「へっへっへ……!かかったな、お尋ね者め!」
さきほどまでの柔和な笑顔は消え失せ、店主は肉切り包丁を片手に、電話の子機を握りしめている。
「違いますとは言わせねえぞ?お前、政府をクビになった大幹部様だろ?アンタを突き出せば、政府からたっぷり報奨金が貰えるって噂なんだよ!」
「はぁ!?わちきは平和的に解雇されたんでちゅよ!懸賞金なんて、少っっっっっしも、かけられてないでちゅ!」
「うるせぇ! 逃げたってことは何かやらかしたんだろ!大人しく捕まってろ!」
誤解だ。完全なる風評被害だ。だが、ハヴォックたちが面白半分に流した
「悪質な脳みそ追放令」は、市民たちの間で「賞金首」という尾ひれをつけて拡散していたのである。
「ふ、ふざけるなでちゅーッ!!」
マクロブランクは絶叫すると同時に、自らの身体構造を瞬時に流動化させた。
天井から落下してきた鋼鉄の格子の隙間へ、大脳皮質のシワを強引にねじ込む。
「ぬぷっ」という粘着質な音と共に、脳髄は風船のように細く萎み、檻の外側へとニュルリと滑り出た。
「なっ!?」
勢い余って突っ込んできた店主が、目の前で消失した獲物に目を剥く。
その鼻先で、檻の外へ弾け出たマクロブランクは、即座にゴムまりのような弾力を取り戻すと、
体をコマのように反転させた。
「入るのは、お前の方でちゅ!!」
バインッ!マクロブランクの太い触手がバネのようにしなり、店主の巨腹を強烈に蹴り飛ばした。
「ぐふっ!?」
不意を突かれた店主は、自らが落とした檻の中へと、
まるで吸い込まれるようにたたらを踏んで転がり込む。
ガシャァン!カチャリ。
間髪入れず、マクロブランクは落下した檻のロック機構を触手で叩いた。
爽快なる金属音が響き、狩る側と狩られる側の立場が、わずか数秒で逆転する。
「……だ、出せぇ!この化け物ォォッ!!」
鉄格子の向こうで喚く店主と、カウンターの奥で音を立てて焦げていく合成肉。
マクロブランクは、その香ばしい匂いに1度だけ未練がましく視線を送ったが、すぐに踵を返した。
「……こんな街、こっちから願い下げでちゅ!」
こうして彼は、自分の物であった街の、冷たいアスファルトの上を再び転がるように逃げ出した。
「覚えておくでちゅよ……!わちきをコケにしたこと、いつか後悔させてやるでちゅ……!」
負け惜しみは、雑踏の騒音にかき消される。銀色の摩天楼の谷間で、かつての「宇宙の叡智」は、
動物たちにさえ憐れまれるような姿で、ひもじい夜を迎えることになった。




