issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 27
ニュー・ジャマメの街角。極限まで「効率」と「美観」を追求して設計されたこの銀色の未来都市は、
ひとたび身寄りも立場も失った者にとっては、逃げ場のない巨大な迷路も同然だった。
「……面接、不採用でちゅか?」
「ああ、帰んな。ウチには『脳みそ』が洗う皿なんて置いてねえよ」
1軒目のサイバー・カフェ。取りつく島もない門前払い。彼は気を取り直し、
裏通りのジャンクパーツ屋へ飛び込んだ。ここなら彼の知識が活きるはずだ。
そこは、店主の独特な美学が凝縮された、混沌とした小宇宙だった。
天井からは、色とりどりの廃ケーブルが暖簾をなして垂れ下がり、
陳列棚には電子基板やジャンクパーツが、民芸の小物のように恭しく並んでいる。
壁面には、妖怪とも精霊ともつかぬ異形の民族的な仮面が、ラスタカラーの極彩色に彩られた中で、
怪しくこちらの様子を窺っていた。
「……雇ってほしいでちゅ!わちきなら、この店にあるガラクタを最新鋭のドローンに改造できまちゅよ! 時給は最低賃金でいいでちゅから!」
「あー……。アンタ、あれだろ?元・政府の役人」
恰幅の良い巨体に、丸いサングラス。身に纏うのは、いかにもアフリカ風な極彩色の民族衣装「ブーブー」。 その伝統的な装いと、テック・ガジェットへの偏愛とを追求したファッションセンスが、
かえってこの街に通底した、サイバーパンク的雰囲気の体現者たらしめている黒人の店主が、
油じみたタブレット端末を無言で突きつけてきた。
「さっきお上から一斉通信が来たんだよ。『自律歩行する脳髄を見かけても、決して餌や職を与えないこと』ってな。 違反したら営業停止処分だとよ。……悪いが、関わりたくねえんだ」
「そ、そんな……!ハヴォックの野郎、そこまでやるでちゅか!?」
兵糧攻めだ。あのカバたちは、物理的に政府から追い出すだけでなく、
社会的にマクロブランクを完全に抹殺する気なのだ。
……失意のまま通りを彷徨う。
空腹で思考回路が霞みはじめ、自慢の触手も干からびたミミズのように力なく垂れ下がっている。
そんな時だった。
「おや、そこの旦那。……随分とお困りのようだねぇ」
路地裏の薄暗い定食屋。その暖簾の奥から、愛想の良さそうな店主が手招きをしていた。
「よければ、少し休んでいきな。売れ残りの合成肉ならサービスするよ」
「ほ、本当でちゅか!?」
捨てる神あれば拾う神あり。マクロブランクは涙を流さんばかりに感謝し、店内に転がり込んだ。
出された水と、合成肉の焼ける匂いに、警戒心など消し飛んでしまう。
「いただくでちゅ! 恩に着るでちゅよ!」
彼が触手を伸ばした、その瞬間――。




