issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 23
モニターの中で、宇宙の侵略者が無様に敗北を認めた。その瞬間、
地球全土を包んでいた重苦しい雲が、晴れ渡ったかのようなカタルシスが世界を駆け巡った。
「う、うおおおおおおおおっ!!」
「やったぞ!奴らが逃げていく!」
「カルテット・マジコだ! またあの子たちがやってくれたんだ!」
ニューヨークのタイムズスクエアで、東京の渋谷で、ロンドンのパブで。
そして彼女たちの地元――白走の目抜き通りでは、
アシュリーの容姿を完コピしたサイボーグ親衛隊『ウルトラス』が、
互いの義手を激しく打ち鳴らして祝砲代わりの火花を散らし、
推しの勝利に感極まって奇声を上げながら走り出す、百鬼夜行のごとき光景が展開されていた。
固唾を呑んで見守っていた数10億の人々が、一斉に拳を突き上げ、快哉を叫んだ。
先ほどまで頭上を覆っていたゴチェヌコイ艦隊の威圧感は、
今や「追い払われた負け犬」のそれへと変わり、恐怖は熱狂的な勝利の祝祭へと昇華される。
冬縛女子学園の高等部校長室では、歓喜のあまり理性が消し飛んだ老校長が、
「ええい、この際だ!彼女らには大学4年分の単位まで、全部無試験で認定じゃあ!」
と叫びながら、巨大な認可印を書類に叩きつけようとし、
「ちょ、校長!落ち着いてください!さすがにそれは教育法違反です!」
学年主任が血相を変えて飛びつき、必死に羽交い締めにして止める一幕もあった。
人々は抱き合い、涙を流し、救世主の名を連呼した。自分たちの頭上に、
未だ銀色のナノマシンによる支配の首輪が嵌められていることさえ忘れ、
ただ眼前の勝利に酔いしれた。
……一方。 歓喜に沸く地上とは対照的に、ニュー・ジャマメの統治府、
その最上階にある戦略会議室には、通夜よりもなお悪い、陰湿な空気が渦巻いていた。
「……やられた」
プロディジーが、頭を抱えて呻く。
「マジで決着をつけちまったんなら……もう撃てないじゃねぇか!」
「クソッ!クソッ!クソがあぁッ!」
ハヴォックが、バンバンとテーブルを叩く。
「『制圧完了』だ!? ふざけやがって!あれじゃあ、俺たちが今から衛星砲を撃ったら、ただの『敗残兵イジメ』か『無抵抗な相手への虐殺』になっちまうじゃねえか!」
地球統一政府が掲げる「正義」の建前上、降伏した相手を背中から撃つわけにはいかない。
カルテット・マジコは、その倫理的な急所を正確に突き、WCWCのトリガーをロックしてみせたのだ。
「カァーッ!忌々しいガキどもだぜ!何ひとつこっちの思い通りに動きゃしねェ!」
カーディBがシャンデリアの上で地団駄を踏み、ガラスで作った首飾り――彼なりのおしゃれなのだ――をジャラジャラと落とす。
部屋に充満するのは、「してやられた」という屈辱と、行き場を失った破壊衝動。
そして、そのドス黒い感情の矛先は、自然と、この場の「立案者」でも「実行者」でもない、
ただひとり安全圏からシステムを管理していた者へと向いた。




