issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 20
「む……」
ガザクが唸る。それが何を意味するか、彼のような古狸にはすぐに理解できた。
地球政府に対し、「攻撃する必要性」を失わせるのだ。すでに制圧された艦隊を撃てば、
それは「地球きっての英雄」をも巻き込む無差別虐殺となり、新政府の正当性に傷がつく。
同時に、ゴチェヌコイ側としても「特務部隊に制圧されたため作戦行動不能」という、
撤退のための完璧な言い訳が立つ。
「つまり……私に、人質役を演じろと?」
「その通りです。お互いの安全を確保するための、最高に平和的な『八百長』ですよ」
おせちはニッコリと笑ったが、目つきはつとめて冷ややかだった。
「もちろん、拒否権はありません。……じゃあみんな、やって」
「オッケー!じゃあこっから先は『フリークラウドから来たワイルドな瞳の少女』に全部任せろぉ!」
号令一下。アシュリーが嬉々として跳躍した。
「……ロックンロールのど真ん中ッ、最高のライブパフォーマンスッッ……!!
ボウイもきっと喜ぶぞ!!」
彼女の蹴りが、壁面に飾られた変形ギターのコレクションを直撃する。
「ギャアアア!私のヴィンテージ・カスタムモデルがぁぁぁッ!」
ガザクの絶叫も虚しく、壁に叩きつけられたギターは、
アンプに繋がってもいないのに断末魔のようなフィードバック音を残して絶命した。
ネックは無惨にへし折れ、極彩色のボディは粉砕され、引きちぎれた弦が銀色の蛇のように宙を舞って、床一面に散乱していく。
アシュリーは止まらない。獣のようなバネで跳躍すると、続けてDJブースのド真ん中へ、踵落としを見舞う。
鋼鉄のターンテーブルが唐竹割りにひしゃげ、内部回路から派手な火花が爆ぜる。
衝撃で弾き飛ばされたレコード盤が、高速回転する黒いチャクラムとなって空を切り、
ガザクの頭上数cmの壁に、シュパッ!と鋭く突き刺さった。
「ウチもやるー!」
はちるが、部屋の中央に存在する、ネオン管で縁取られた巨大な漆黒のテーブルを、
軽々と床から引っぺがし、そのまま豪快に横倒しにひっくり返す。
上に置かれていた高級クリスタルグラスやボトルが雪崩のように滑り落ち、派手な音を立てて砕け散った。琥珀色の液体がカーペットに染み込み、部屋は瞬く間に、理性をなくしたロックバンドが打ち上げで暴れ回った後のような惨状へと変貌していく。
「ひ、ひぃぃッ!私のコレクションが!120回払いのローンがまだ残っているインテリアが!」
悲鳴を上げるガザクの襟首を、ネ=レネが背後から掴み、強引に酒浸しのカーペットへ押し倒す。
なおも気ままに繰り広げられる乱暴狼藉の中、ひとり、
申し訳なさそうな顔でその動向を見守り続けていたさなが、天啓を得たかのように、ぽつりとつぶやく。
「……もしかして!別にここじゃなくて、何もない空き部屋とかでやったらよかったんじゃ……」




