issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 19
ふたたび、ゴチェヌコイ艦隊の司令官室……。
「……ま、まあ、特使殿。そう悲観することはない」
ガザク艦長は琥珀色の酒を手元の新しいグラスにトクトクと注ぎ直し、
揉み手でもするような卑屈な声音で言葉を継ぐ。
「撤退プロセスは、直ちに、かつ厳粛に履行しよう。約束する。しかし……それはそうとしてだ。
過ぎた事は、この広大なる宇宙の闇へ、綺麗さっぱり流してはくれまいか?」
爬虫類人の男は、同意を求めるようにネ=レネと、背後に控えるカルテット・マジコの面々へ視線を配る。
「我らゴチェヌコイとクワウバンは、切っても切れぬビジネスパートナーであり、偉大なる星間条約機構を導く両輪ではないか。今回の件も、言ってみれば少しばかり派手な『共同演習』のようなもの。……なぁ、そうだろう?」
彼は引きつった笑みを浮かべ、必死に「大人の解決」を模索し続ける。
だが、その冗長な世辞を断ち切るように、おせちが冷徹な声を投げかけた。
「……わかりました。では話も終わったところで、とりあえず艦長。そこに寝てください」
おせちは、顎で床をしゃくる。
「……は?」
ガザクは、状況の変化についていけず、爬虫類特有の瞬膜をパチクリとさせた。
「寝ろ、とは……仮眠を取れという意味か?この非常時に?」
「違います。死んだふり……とまでは言いませんが、無様に制圧された敗軍の将として、そこに転がってくださいと言っているんです」
「な、なんだと急に!?ふざけるな!私は誇り高きゴチェヌコイの……」
ガザクが色めき立ち、抗議の声を上げようとする。だが、おせちは冷淡に言葉を被せた。
「じつを言いますと、私たちはいま、わけあって地球政府と敵対してます。
ここに乗り込んだ時点で、いつこの船ごと吹き飛ばされてもおかしくない状態なんです」
彼女は指先で壁――すなわち地球のある方角を指し示す。
「でも、彼らは私の予想に反してまだ撃ってきていない。何かの手違いか、
システムの不具合か……理由はわかりませんが、これは私たち双方にとって、
ラッキー以外の何物でもありません」
おせちは1歩踏み出し、ガザクを見上げながら、畳み掛けるように告げる。
「この『間』に乗じて、先手を打ちます。船内の状態をこちらで確定させ、既成事実として世界へバラ撒くんです。『ゴチェヌコイ艦隊は、カルテット・マジコによって無力化された』って」




